第三章
[8]前話
「そうなってくれました」
「それは本当に貴方が優しくて根気のある人ですから」
この二つの美徳を備えていたからだというのだ。
「ですから」
「それで、ですか」
「はい、この子も心を開いてくれました」
「そうなんですね」
「犬も心があります」
獣医は確かな声で言った。
「人間と同じです」
「だから虐待されると傷付いて」
「そして優しさに触れるとです」
「心を開いてですね」
「慕います」
そうなるというのだ。
「そこは同じです」
「犬も人間もですね」
「そうです、それでです」
獣医はさらに話した。
「貴方の家族になりました」
「そうですか」
「貴方だからこそ、それとですが」
獣医は彼にこうした話もした。
「前の飼い主の」
「ああ、あいつですか」
「刑務所の中でも暴れて」
それでというのだ。
「何と人を四人も殺して」
「刑務所の中で」
「はい、相手はヤクザ屋さんばかりでしたが」
「四人も殺して」
「多分死刑にです」
即ち極刑にというのだ。
「なりそうです」
「四人も殺したら仕方ないですね」
「そうですね、悪人の結末ですね」
「はい、碌でもない奴はそうなるんですね」
「そうです、ですが貴方はこの子とです」
今度はソラを見つつ光彦に話した。
「幸せに過ごされて下さい」
「はい、じゃあソラこれからも宜しくな」
「ワンッ」
ソラは光彦に明るい鳴き声と表情で応えた、そうしてだった。
光彦はソラと一緒に家に帰って彼との時間を満喫した、時間はかかったがもうソラは彼を怯えていなかった。心から彼を慕い懐き家族になっていた。そして後日清波羅が死刑となり泣き喚き必死に死にたくないと叫びながら絞首刑になったと聞いた。それは実に無様なものであったと。
乱暴な飼い主のハッピーエンド 完
2020・12・25
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