四十三 再来
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いか確証はないので、イズモとコテツはアスマの命令でシカマルの護衛をしつつ、角都の様子を窺っている。
敵陣突破の棒銀は犠牲駒。
その犠牲駒にアスマ自らがなるつもりだと察したシカマルはギリ…と唇を噛み締めた。
「だからって…!アンタが犠牲になるこたぁないだろ、アスマ…!!」
悔しげにアスマと飛段の戦闘を見る。
暁に圧力をかけられるほどの駒にもなれない自身が憎らしい。
気を逸らすほどの餌の駒ですらなれない。
『暁』の二人組は間違いなく大駒。
大駒を捕らえるには大駒の代償もやむなしと思えるほどの餌が必要だ。
その最善の手とも思える餌になり得るほどの駒はこの場にはいない。
今の持ち駒で使える戦力はアスマくらいだ。
「なにか打開策はあるか、シカマル?」
角都と飛段から視線を離さずに訊ねられたイズモの問いに、シカマルもまた術を発動させながら答えた。
「奴らは明らかに大駒。だがこちらには奴らの気を逸らすほどの駒すらないんスよ」
「…俺らじゃ、餌にもなりはしないってか」
チッと舌打ちするコテツの横で、シカマルはアスマの背中から目線を逸らさず、冷や汗を流す。
アスマの頬が飛段の放つ鎌で斬りつけられる。
圧倒的不利な現状に、シカマルは思わず師を呼んだ。
「アスマ…!!」
三刃の大鎌の切っ先に付着した血を見て、にんまり嗤う。
そのままその血を舐めようとした飛段は、刹那、霧の彼方から飛んできた何かに注意が向いた。
鎌で受け止める。
「────はん。餌、ねぇ」
衝撃。凄まじい打撃音。角都が軽く目を見開いた。
「なら、その餌とやらになってやろうじゃねぇか。大駒くらい動かせっだろ」
霧が深い。その中で、ぼうっと人影が浮かび上がる。
見覚えのある姿に、アスマがハッと眼を見張った。
三刃の大鎌にも劣らない、否、それより大きな得物を軽く肩に回しながら、男は嗤う。
戦闘中にもかかわらず、その場にあっさり割り込んできたその人物を見て、角都は眼を輝かせた。
「鴨が葱を背負って来たな…ちょうど換金所だ。貴様の死体は高値で売れる」
「あん?」
角都の言葉を耳にした男は、得心がいったように「ああ」と肩を竦めた。
「俺を売ろうってか。お目が高いな」
死体換金所をチラッと見る。
それで察した男は「だが残念」と肩に担ぎあげた首切り包丁をくるっと回した。
「この身は売約済でな。他をあたりな」
賭けをしている身。そう易々と放り出せない。
十年ほど前から約束しているこの身も首切り包丁も、その賭け事が終わるまでは絶対に。
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