第六十一話 食べてもらってその二十九
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「ふとした弾みで嫌いになって」
「ないと思いますけれど」
「だからあるの、これまで嫌いじゃない人を嫌うとか」
「そう言われますと」
「あるでしょ、阿波野君にも」
「その親戚の人達とか、今は大嫌いですけれど」
阿波野君の場合嫌いはなくて大嫌いも通り抜けて超嫌いになっているみたいです、人を嫌う感情があまりにも強いですから。
「前はそうでもなかったです」
「ほら、そうでしょ」
「人を好きになる嫌いになるってすぐになるんですね」
「変わるわよ」
本当にすぐにです。
「きっかけがあったら」
「好きな人もそうなりますか」
「そう、だからね」
「気をつけないといけないですね」
「阿波野君悪い部分見たらそれだけになるでしょ」
人もものもです。
「そうでしょ」
「そう言われますと」
「それじゃあいい部分も見てね」
そうしてとです、私は阿波野君にお話しました。
「やっていってね」
「そうしたらいいんですね」
「阿波野君も人のいい部分だって見るでしょ」
「はい、悪い部分も確かに見ますけれど」
それだけでなく、というのです。
「ちゃんとしています」
「それじゃあね」
「いい部分も見てですか」
「やっていってね」
こう阿波野君に言いました、そうしたことをお話しながら洗いものをしてちゃんと拭いてでした。その後で。
二人でお外に出ることにしました、ここで。
お母さんが私に笑って言ってきました。
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