第三章
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「それで、ですか」
「断わりました」
「酷い病院ですね、じゃあ飼い主さんにもです」
「このことはですか」
「お話します」
獣医は由美に約束した、そしてだった。
次の日無事猫は飼い主に引き取られたと連絡があった、飼い主は由美の近くの家に住んでいる資産家の郷田さんだった。三匹の白い雄猫を飼っていることで有名だ。
後日その権田さん、派手な外見の中年女性が家に三匹の猫達を連れてやって来た。お礼の高給菓子も持って。
「貴女のお陰でシューベルトちゃんは助かったわ」
「それは何よりです」
「窓を開けてお掃除していたらその窓から逃げ出して」
「それからですか」
「ずっと探していたけれど」
「見付かって何よりでしたね」
「ええ、ただあの病院にはね」
郷田さんは難しい顔で由美に話した。
「私ずっとうちの子達見せていたのよ」
「そうだったんですか」
「その時はいつも可愛いとかにこにこしてじっくり診てくれていたのに」
こう言うのだった。
「それがだったのね」
「はい、野良猫だと思われて」
「一ヶ月ずっと外にいたらどんな猫ちゃんでもね」
「汚れますよね」
「それでそんなこと言ってたの」
「診てくれませんでした」
「あと少しで手遅れになっていたかも知れないのに」
郷田さんは自分によく懐いて傍から離れない猫達を見ながら言った。
「そんなことするなんて」
「どうもお金を持ってる人には優しくて」
「持っていないとなのね」
「生きものの命はどうでもいいらしくて」
「そんな病院はもう」
郷田さんは怒って言った。
「二度と行かないわ、他の人達にも言うわ」
「あそこはそうした病院だって」
「ええ、生きものの命をお金としか思っていない」
そうしたというのだ。
「酷い病院だって」
「そうですか」
「絶対に許さないから」
「ニャーーー」
「ニャンニャン」
「ニャーーーオ」
ここで猫達を見た、見ればそれぞれ首輪に名前が書かれている。郷田さんはその首輪の名前も観て言った。
「ちゃんと名前も書いていたのにね」
「その名前もです」
「見ようとしなかったのね」
「そうみたいですね、私は首輪に気付きましたが慌てていて」
痩せこけていて今にも死にそうに見えていたがだ。
「名前まではです」
「確認していなかったの」
「獣医さんにお渡しするまで」
ずっと、というのだ。
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