第一章
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外道獣医の末路
この時塚本由美は夫の太一、会社員をしていてやや収まりの悪い黒髪を耳が隠れる位に伸ばしセンターで分けている面長で明るい顔の彼に言っていた。
「あの獣医さん本当にね」
「お金を持っていない様な人にはか」
「全然サービスしないでね」
「ぞんざいに観てなんだ」
「そう、それでお金持ってる人にはね」
怒った顔で話した、黒髪を長く伸ばしてにこやかな目であるが今は怒っている。背は一六〇程で夫より十五センチは低くすらりとしたスタイルだ。
「もうへらへらしていて」
「わかりやすい人だな」
「獣医さんも色々なのね」
「あの獣医さん評判いいけれど」
「私もそう聞いて行ったけれど」
それがというのだ。
「もうね」
「キッドの診察もか」
「もうちらっと見た感じで」
「見たか」
「診察じゃなかったわ」
もうそれはというのだ。
「そんなのではい終わりで」
「診察代もか」
「滅茶苦茶高くて」
「じゃあ他のとこに行った方がいいな」
夫はすぐに結論を出した。
「それがいいな」
「他の獣医さん車で二十分だけれど」
「けれどそんないい加減な獣医さんよりもな」
「しっかりした獣医さんね」
「その方がいいから」
だからだというのだ。
「もうな」
「そこに行った方がいいのね」
「そうしよう、大事なのはキッドだし」
「ワン」
夫はここでキッドを見た、ふさふさの毛のチワワだ、毛の色は白と薄茶色で細い毛の量は実に多くしかも長い。
「キッドの為にもな」
「そうした方がいいわね」
「ああ、それじゃあな」
「その獣医さんは行かないってことで」
こうして話が決まった、実際に由美はそれから二度とその獣医に行かなかった。それでキッドをその車で二十分の病院に連れて行く様になったが。
ある日自転車でスーパーに行っていた時にだ、不意に。
「ニャ〜〜〜・・・・・・」
「!?」
ボロボロの毛で痩せこけた猫を見た、その猫を見てだった。
由美はすぐに拾って夫に言っていた動物病院に連れて行った、そして診せようとしたが。
獣医の大溪直永、収まりの悪い黒髪をオールバックにしていて丸顔で無精髭を生やし小さな険のある目の一六二センチ程度の男はこう言った。
「ほら帰った帰った」
「この子大変そうなんですけれど」
「その子捨て猫か野良猫だよね」
猫を汚い目で見ながら言ってきた。
「そうだよね」
「だから何なんですか?」
「うちは捨て猫扱ってないんだよ」
「お金はありますけれど」
「あんた前に来たけれど家は普通のサラリーマンだよね」
「それがどうかしたんですか?」
「うちは慈善事業じゃないんだよ」
こう由美に言うのだった。
「だからだよ」
「診られないっ
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