木綿季のオリジナル
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物の待ち受けが、静かに可奈美を見返している。
「可奈美さん!」
可奈美の意識を戻したのは、背後のチノが裾を掴んだ時だった。
「チノちゃん?」
「助けてください……木綿季さんの言ってることがさっぱり分かりません!」
「え?」
「私、そんなに変なこと言ったかな?」
机では、ココアが頭から煙を出しながら突っ伏している。どうやら彼女はオーバーヒートしてしまったようだった。
「あれ? どうしたの?」
「どうしたんだろ? 私がちょっと話したら、お姉ちゃんがのぼせちゃって」
「お姉ちゃんに……任せなさい……」
ココアが消え入りそうな声で言葉を紡いでいる。
「ちょっと鹿島新當流の話をしただけだよ」
「ああ。姫和ちゃんの……でも、それでそんなにパンクする? ココアちゃん?」
何の気のなしに、可奈美はココアへ尋ねた。するとココアは首だけを動かし、魂の抜けた顔で見上げた。
「可奈美ちゃんは分かるかもしれないけど、普通の女の子は剣のことなんてさっぱりわからないんだよ……」
「「うそっ!」」
「普通分からないよ!?」
オーバーヒートしたはずなのに、一気に復活した。ココアは白目を剥きながら、
「ねえ可奈美ちゃん! 普通の女の子は剣のナントカ流ってわからないよ! ……いやリゼちゃんなら分かるかもだけど……」
「そうなの?」
と木綿季。
可奈美は首を傾げながら、
「私は友達から、結構色んな剣術を聞くよ? そうして覚えたのもたくさんあるし」
「僕も、ネットで色々調べたから、それなりに覚えたんだけど」
可奈美と木綿季は頷きあい、ココアとチノを見る。
「「変わっていらっしゃる」」
「「こっちが(ですか)!?」」
ラビットハウスの裏庭で、可奈美は鞘に収めた千鳥を持っていた。
相手は、竹刀を手にした木綿季。あまり自由の利かない体のため、ココアが彼女を支えている。
「本当に大丈夫ですか?」
中庭の端で、チノが心配そうに尋ねた。だが木綿季は元気に答える。
「平気平気! 動けるようになった僕を、可奈美にも見てもらいたいし!」
木綿季がまっすぐに可奈美へ剣を向ける。
可奈美は頷いて、千鳥を構えた。無論御刀を一般人に向けるわけにもいかない。鞘からださず、このまま迎え撃つつもりだった。
「じゃあ、やろう! 立ち合い!」
「チャンバラだね!」
勘違いしながらココアが目を光らせている。
「私も参加していい?」
「ごめん、ココアさん。僕がやりたいんだ」
木綿季の顔が、あたかも肉食獣のようにゆがむ。
「見せてあげるよ。可奈美。僕がずっと考えていた、僕だけの技!」
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