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オズの木挽きの馬
第五幕その五

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「これといってね」
「そうなのね」
「うん、ただね」
「ただ?」
「川は別に危ない生きものもいなくて」
「安全なのね」
「そうだよ」
 このこともお話しました。
「だからね」
「安心してなのね」
「渡るといいよ」
 この川をというのです。
「そうしたらいいよ」
「魔法の絨毯や船を出して渡れるけれど」
 それでもとです、グリンダは言いました。
「けれどね」
「それでもですか」
「ここは渡し守の人がいるから」
 グリンダも恵梨香にお話します。
「それでね」
「だからですか」
「乗せてもらいましょう」
「それじゃあ」
「今からお話をしましょう」
 こうお話をしてでした。
 皆は小舟のところに行きました、すると。
 その人のお顔を見てです、恵梨香は言いました。見れば小柄でお猿さんみたいな感じの明るい顔立ちの人です。
「まさか猿飛佐助さんですか」
「おいらだってよくわかったな」
「だってお話でよく聞く様な」
「そうした感じだからかい」
「わかりました」
「水練の修行でここにいたんだがな」
 それでもとです、佐助さんは恵梨香に言いました。
「わかるんだな」
「いや、わかるのはこの娘だけだよ」
 このことは木挽きの馬が答えました。
「君のことを知っているね」
「そうなんだな」
「僕達は君達の名前は知っていても」
「顔まではだな」
「知らなかったんだ」
「そうなんだな」
「私は日本人ですから」
 また恵梨香が言います。
「佐助さんも他の十勇士の皆さんも」
「わかるんだな」
「はい、そして幸村さんのことも」
「殿のこともかい」
「皆さんオズの国に来ておられますね」
「ああ、大阪の陣が終わってな」
 佐助さんはこの時のことからお話しました。
「殿と一緒に秀頼様をお連れして薩摩まで逃れて」
「幸村さんも生きておられたんですか」
「ああ、歴史じゃ死んだことになってるけれどな」 
 その実はというのです。
「皆必死にな」
「秀頼様をお助けしてですか」
「そしてな」 
 そのうえでというのです。
「薩摩まで逃れたんだよ」
「そうでしたか」
「殿もだよ」
「そのお話を聞いてほっとしました」
「それで薩摩でずっと暮らしていて」
 それでというのです。
「神社に祀られていたけれどな」
「オズの国に入られたんですね」
「おいら達は皆に夢を与えるらしくてな」
「そういうことですか」
「ああ、だからな」
「今はオズの国で」
「幸せに暮らしてるぜ、修行もしながらな」
 佐助さんは恵梨香に明るく笑ってお話しました。
「殿の下でな」
「他の皆さんともですね」
「そうさ、十勇士全員がな」
 まさにというのです。
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