暁 〜小説投稿サイト〜
同盟上院議事録〜あるいは自由惑星同盟構成国民達の戦争〜
閉会〜金帰火来には遠すぎる〜
分かたれた家〜ティアマト民国〜
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銀河一だ!」
 派手好きで突飛なことを言って目立つ。遠慮も呵責もなしにビジネスでねじ伏せる。
理想化された開拓と飛躍の時代の合言葉、【古き良き自由の夢】(グッド・オールド・リバティ・ドリーム)の体現者、とすら受け止められた。
 (直接的には)軍も関わらず、ましてや帝国からフェザーン経由で入ってくる廉価な商品相手に”質で勝つ”ということすらも同盟市民たちの琴線に触れたのだ。
 ティアマトの全土の選挙に勝つということは全国的な知名度を持つというということに等しい――アリシアは軍の女性将兵の為の改革運動に携わり、女性弁護士として知名度を上げていた。
 敵を打ち倒し、笑い、喝采を受ける。あぁそれはよいことだ――政治でなければ。
 政治とは敵を打ち倒すものではない。そうではない、【打ち倒した後】こそが政治の本領である。だからこそ終わりはないのだ、闘争は義務と人は言う、なれば闘争は政治の一過程に過ぎず、政治とは人の営みそのものである。

 自慢げに成果と儲けを何に使わせるかをまくしたてるタロットを事務総長が遮る。
「‥‥‥議長、議長」「なんだね」
 打って変わって冷ややかな目で事務総長を見る。彼はハト派として民生優先を唱えている、アリシア達にとっても政敵であるが――自治領の連合であるのならば無碍にもできない。彼も同じく帰郷連合に理解を示すことも少なくないし、民生優先には他自治領のことも含まれている。

「君はティアマトのブランドと呼称するのがそんなに嫌なのかな?
それならばこのティアマト民国参事会も気に食わないだろうな、それなら私は君の精神的苦痛をおもんばかり――」
 頬を吊り上げ、声色が徐々に挑発的になってゆく。ティアマト帰郷連合の面子すら穏健派が露骨に顔をゆがめる程に攻撃的で排他的なモノが顔を出しつつある、
 アリシアをはじめとする政治家達はそれだからこそ、彼を”議長”と呼ぶことにいまだに違和感を感じるのだ。ティアマト民国は自治領の連合であり政府参事会は党派を問わず自治領の合議により運営されるべし。それは実態に沿った不文律である。

 アリシアが咳払いをした、さすがにこれを続けているとティアマト帰郷連合全体の問題になりかねない。
「議長、よろしいでしょうか。事務総長は私の報告に時間がかかると申し上げたいのだと思いますが――」

 タロットはにこやかな顔に戻り、アリシアに鷹揚に謝罪した。
「あぁ、そうだった!すまない、すまない!それでは諸君らにアリシア同盟弁務官から―」

 アリシアはため息をついた、これで大衆と財界からの人気が絶大だから性質が悪い。さて来年の最高評議会議長選挙、下院選挙に合わせて行われる我々の元首選、この男はどうせ二期目を狙うだろう、その頃までに落ち着けばよいのだが――

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