暁 〜小説投稿サイト〜
同盟上院議事録〜あるいは自由惑星同盟構成国民達の戦争〜
閉会〜金帰火来には遠すぎる〜
分かたれた家〜ティアマト民国〜
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「こちらは落ち着きましたわ、報告は後程、フローニンゲンの方はいかがでしょうか?」
 テルヌーゼン共和国からほど近いフローニンゲン自治領でバーラト首都圏の台所を支えている一角であり、ティアマトの行政を支える情報インフラの拠点でもある。
 ティアマト政府の行政サービスは高度な情報化が進んでおり、情報交通委員会が改革のテストモデルとして支援していることから他の構成共和国からも注目されている――当の本人たちからすればそんなことはいいから本土を奪還してくれ、というのが本音であるが。
 
 なるほど、と頷きマンスホルト事務総長――行政首班相当が神経質そうに時間を確かめる。
「皆様、定刻になりましたティアマト民国参事会を始めたいと思いますが――」
 ちらり、と時計を眺めて舌打ちをした。
「まだ――」

「やぁやぁ!諸君、すまないな、待たせた!!」
 がっしりとした固太りの男が立体テレビジョンに出現し汗をぬぐう。
 ヒューイ・タロット、全国選挙で勝利したティアマト帰郷連合盟主にしてティアマト民国の元首である。
「えー、始めましょう、タロット議長もいらっしゃいましたので」

「異議なし」「異議なし」
 参事達に続き、自身もまた異議なし、と唱和しながらもアリシアはため息をついた。
 この男は恐ろしいほど馬力がありタフな『ビジネスマン』である。農地持ちの実家を飛び出したかと思えばバーラトで怪しげな退役軍人たちをかき集めた興行をはじめ、そうかと思えばエルファシル共和国のアプス自治領へ渡り、食品加工業を立ち上げてヴァンフリートへ売り込みをかけるという心底、派手好きな男である。
 皮肉なことであるがティアマト民国という知名度を若い世代に知らしめたのはこの男の騒がしさ(ネームバリュー)によるところが大きい。
 そして圧倒的な知名度と若者受け、そして『ティアマト・ブランド』の復活という手土産を旗印にティアマト主要産業、一次産業と食品工業界の圧倒的支持をもって、政治的な経験を一切持たないこの男は、3年前にティアマト民国参事会議長――すなわち国家元首となってしまった。そして翌年の任期満了後も2期目は堅いだろうといわれている。

 彼自身がいつの間にか『ティアマト』意識(ナショナリズム)の象徴となったことに『実』が伴ったことはティアマト政界でも危機感を覚えているものは多い、その一人がアリシアである。

「いいだろう!それでは素晴らしいことに我らの新作、『キシャルの麦』を利用した糧食はすでにアスターテへの納入が決まった!更に文化交流事業において観光資源としてアスターテからも指定を受けられる!!」
おぉ!と参事会の財務担当と産業開発担当が歓声を上げる。

「また一つデッカい取引(ビッグディール)が決まったぞ!!ティアマト・ブランドは
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