暁 〜小説投稿サイト〜
同盟上院議事録〜あるいは自由惑星同盟構成国民達の戦争〜
閉会〜金帰火来には遠すぎる〜
分かたれた家〜ティアマト民国〜
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する。そして探ろうとする連中がその先に進めぬよう、防諜と情報管理のプロであるドーソンが情報を管制しているのだとすれば――
軍の機密作戦であれば議会への情報開示のタイミングすら問題になる。特にイゼルローン攻略作戦は同盟政界と軍部にとって頭の痛い問題である。【縦深】だけでなく国境付近の政治家達にとっては文字通り『目と鼻の先』の出来事なのだから当然政府は軍の動向に神経を尖らせ、議員達は国防委員会や制服軍人たちとコネクションを繋ごうとする。 『政治家と付き合えば偉くなれる』というと悪しき事のように吹聴する愚者がいるが議員達からすれば『政治家の意義と理解できぬ愚物が軍権を握る事こそが人材の払底なのだ』と主張すべきであろうし、それも一面の真実である。とりわけ防衛戦争であれば尚の事だ。
しかしながら制服軍人、特に機密を扱う者達にとってはその『コネクション』が腐敗と漏洩の元になる、というのも『軍人と政治家の付き合い』という民主国家の命題における別側面の真実である――。
「参ったわね」
とはいえここまで言い張るのであれば相応の勝算はあるのだろう。トリューニヒトとシトレのコンビとロボスがうまくやって見せることを祈るしかないか――アリシアは重いため息をついた。
「先生、そろそろ時間です」
別の秘書が機材の準備はできました、と促す。
「気が重いわね」
とはいえまだ推測だ、バーラトに戻り実際に調べて確信を得てから話すべきだろう。
今は――”故国”と相対する時間である
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ティアマト政府参事会――その実態は自治領を代表する政府参事――閣僚の合議体である。ティアマト民国の実態が自治領の連合体であるのならば必然として中央政府機構はあらゆる点において分権化せねばならない。何しろ本土が文字通り星の彼方に点在しているのだから――だからこそ開催されるそれの半数はこのような形となる。
専用の端末をいじり、生体認証とパスワードを打ち込む。
「お待たせしました」
立体テレビジョンの向こうに見慣れた顔が映る。
「いいえ、時間通りですよ」「久しぶりだな、アリシア弁務官」
参事達がテレビジョンに浮き上がる。10数名いる彼らの過半数は中道右派政党連合、ティアマト帰郷連合の幹部だ。
左派の自治共同連盟は分離主義――というよりも分権派と自治領から各構成共和国への吸収合併派までの幅広い寄り合い所帯である。
1世紀以上もこの状態では致し方あるまいか、という諦観は少なからぬものが抱いているが交戦星域からバーラト首都圏までの歪なグラデーションの”地域格差”よる対立はティアマト民国の散らばった自治領にも存在する。
「アリシア弁務官、アスターテの事後処理は落ち着きましたか?」
マンスホルト事務総長、ティアマト民国政府の官僚上がりの政府参事が尋ねる。
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