暁 〜小説投稿サイト〜
同盟上院議事録〜あるいは自由惑星同盟構成国民達の戦争〜
閉会〜金帰火来には遠すぎる〜
分かたれた家〜ティアマト民国〜
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きがあった。軍政に関わることか、あるいは何かしらの機密に関わることだ。
 そして普段は艦隊司令官が出向くヴァンフリートの【戦没者セレモニー】、これは捜索の打ち切りを意味するものでハイネセンでの【儀礼】が終わった以上、わざわざ軍の第三席が出向いてあのような演説をぶつ理由が単なる『景気づけ』なわけが無い、ホアン・ルイもその不自然さを感じ、探りを入れたはずだ。
「まさか私達はあのオッサンに一杯食わされた?」
 アリシアの背を冷たい汗が流れた。
 その警戒下であれだけ用心深いのに構成政府と支持者を回る我々に情報を漏らした理由は何だ?
 グリーンヒル大将の演説の中身までホアン・ルイが知っていたかどうかはわからないが、厄介な面子が動いていることを察知していたからこそあの飄々としたベテラン政治家は何食わぬ顔で我々に向かって情報を流していた!

「……なぜかしら?」
 ヴァンフリート演説を聞かせる為――否、どうであれ私達は【交戦星域】で軍中央が動くのなら耳を澄ませている。それをあのタヌキが知らないわけがない。
 ちがう、だからこそだ。ご丁寧にルンビーニの件まで漏らしてきたのはシトレの件に全力を注がない状況を確定する為であり、次の情報交通委員の面子への牽制、ひいては労農と【縦深】に利益を引き込むための手土産だろう。
 労農からすれば我々は上院で協力関係を築ける貴重な会派だ。だからこそ、ここで我々が余計なことをしないよう、目先のルンビーニ事故調査と統合作戦本部長人事で進むべき餌を投げて我々の利益になりつつも現時点で深入りをできない状況を作ることを目的と想定するべきか?
 安全保障委員会において第七次イゼルローン攻略作戦における交渉が始まる前に上院の政局を固め、我々の選択肢を限定する――いや待て。

「第六次イゼルローン攻略戦は演習に偽装した奇襲だった」
 議会においても予備費を用いた奇襲攻撃であり第五次とは打って変わり事後の知らせとなった。つまり二個艦隊の再建を予定した補正予算の予備費を利用し行えると仮定する。
 なおかつ『大規模な攻略作戦を行う』と公共電波に流した理由は何か、ヤン・ウェンリーの第13艦隊の初演習に合わせたから?副官にフレデリカ・グリーンヒル中尉を引き込んだ上で父親が同じ日にヴァンフリートで大演説をぶった。
 同盟軍の目的と実力と手段を全て想定しフェザーンへのリーク……違う――デコイの可能性…そうか!

 アリシアは唸った。これだ、という確信を自身の直感がささやいている。
「来年の下院と最高評議会議長選からイゼルローンへの出兵を予想されていることを利用し、帝国と同盟政界に『情報戦』を仕掛けるつもりか!」

 結論が出ない、断定できない、だが問題はそこにあると強気に明言する。それこそがこの騒ぎを企てた連中の目的であると仮定
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