暁 〜小説投稿サイト〜
同盟上院議事録〜あるいは自由惑星同盟構成国民達の戦争〜
閉会〜金帰火来には遠すぎる〜
分かたれた家〜ティアマト民国〜
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「じゃあなに?イロンシ達も何も知らなかったってこと?」
リヴォフは俺を睨みつけてもなぁ、とぼりぼりとこめかみを掻きながら答える。
『あぁヴァンフリート側でもあれは予想外だったようだ。イロンシも対応に追われている』
ヴァンフリートまで混乱しているのは昨日の『ヴァンフリート演説』が理由である。
軍首脳部の彼が明確にイゼルローン攻略を断言したのは異常である。
「……何を考えているのかしら?」
『わからん、ドワイトの野郎が独断でやったわけはねぇが』
リヴォフすら頭を抱えているのは異常事態だ。
「……【バーラト・エリート】の陰謀、か」
バルプ本みたいで笑えるわね、と肩をすくめる。【キングフィッシュ・ヨブ】、【シトレ校長先生】【ラザール親父】――誰をとっても曲者ぞろいだ。
さてな、とリヴォフは剽げて肩をすくめる。
『だが目的は割れている。選挙だ、であるならお前さん達【ティアマト人】の選挙には支障があるまいよ』
「それはいいんだけどね……」
来年の頭、つまり同盟総選挙 それでも彼らの中には4年に一度の自治領協議会(立法院)総選挙の際にティアマト本土へ赴き投票を行うものが投票者の中で数割を占めている。
アリシアはそうした人々を中心に支持基盤を持つ右派国民政党『ティアマト帰郷連合』の幹部である。
「バーラトの連中が何を企んでいるのか探らないと後手に回ればトリューニヒトにまたしてやられるかもしれないわよ?」
トリューニヒトは派手な空中戦が持ち味だ。出世が早かったのも地方政党の寄り合いであった国民共和党に官僚や著名人を引き入れた【中央派】派閥を作り上げた一人だからである。そのため、土着層が多い上院の基盤は弱いが下院を左右する【同盟の空気】のコントロールについては一級品だ――とはいえ肝心の本人は有力候補をぶつけられて『得票率4X%』の大接戦で当選を続けている。
『ハイネセンに戻ったらロムスキー先生とリッツ教授とも相談せねばならんな。イロンシも探りを入れているが……』
本人の危機感が強いだけに国防委員会として派手な功績が欲しいのは間違いない。個人選挙の弱さを笑うのは二流だ、150億の民意を見極める屈指の政局屋が常に選挙前に窮鼠となるのはどれほど恐ろしい事なのか、とくに交戦星域の利益代表達は考えなければならない。
「本気でトリューニヒトとシトレが手筈を整えているのなら本丸は難しいだろうけどね」
うむ、と【提督】の顔つきに戻った老人を見てアリシアは顔を綻ばせた。
『であろうと俺を出し抜こうとするなら年季の違いを教えてやるさ』
「らしくなってきたじゃない、そちらは提督さんに任せます」
彼女にとって今は同僚であるが若い頃はまさしく故国から排出されたエースであった――と言うのは半分本当で半分嘘だ。実
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