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同盟上院議事録〜あるいは自由惑星同盟構成国民達の戦争〜
閉会〜金帰火来には遠すぎる〜
分かたれた家〜ティアマト民国〜
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1世の『大親征』であった。緒戦の水際防衛において同盟軍の大敗を見た彼らは帝国軍の収奪を危惧し、ある者はバーラトなどの奥地へ、ある者は難所に要塞群を連ねたヴァンフリートへと身を寄せることになった。
帝国軍はサジタリウス腕最奥の首都バーラトまで迫る勢いで優勢であった。コルネリアス1世は優秀な作戦家であったのは疑いの余地はない。だが後背でおこる熾烈なゲリラ戦は後方連絡線を脅かし、陸上戦力やら補助艦艇やら無尽蔵の浪費を予備選力を担う門閥貴族に強いていた。
有力な学説として「コルネリアス1世は元帥号を多くの側近に授与し、登用することで既存の皇族、広大な門地をもつ門閥を中央官界から一掃することでルドルフ時代の中央集権を成し遂げようとしたのではないか?」と分析されている。
仮にそれが真実であれば、こうした消耗戦すらもカイザーの目論見の通りだったのかもしれない。だが貴族達の忍耐は新興の【元帥杖を持った腰巾着】の指揮において戦果(私掠)の見込めぬ軍事出費を強要されることに耐えられなかった。ましてやこれが彼らの弱体化を目論んだ策であると囁かれるようになれば――彼らは政治的、そして軍事的実行力をサジタリウスではなくオーディンに向けて捻出したことで、大親征は銀河帝国においては、カイザーの権限が大幅に削られる形で終結した。
――閑話休題――
一方、自由惑星同盟においては経済・人口の両面でバーラト一極化が進んだことと、戦時体制の構築による【同盟政府】の強化により130年近く続いている自由惑星同盟の国体が成立することになった。
だがバーラトが笑えば泣くものも当然居る。とりわけ現在の【交戦星域】は悲惨であった。アルレスハイムは事実上の寡頭制であったところに熾烈な国家総動員戦争で高まったプロレタリアの政治意識に社会体制が追いつかず、革命騒ぎが起こり、時の同盟国務委員長(同盟弁務官総会議長)が介入する事態となった。
そして、アスターテとティアマトも甚大な被害を受けた。彼らは以後も交戦地域となることが確実となり、アスターテは国家の喪失を恐れ、植民船団への定住化を進め。
ティアマトは基幹産業であった食糧生産のため、アスターテ、ドーリア、エラゴン、バーラト――各構成国の農業開発区域に『自治領』として仮住まいをして避難民の受入と永住化が進められた。
例えばサンムマラート・アシリアはティアマト民国選出の同盟弁務官であるが産まれはアスターテ連邦共和国と言った方が同盟市民の大半には通じるだろう。
彼女はティアマト民国自治領にして”重力制御植物工場農法”の一大拠点、『ニムルド・コミューン』で生まれ育った。
彼女は今もニムルド・コミューン旗艦の同盟弁務官事務所で執務を行っている。別の船団コミューン旗艦に座すアスターテの同盟弁務官リヴォフを睨みつけながら。
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