第二章 勇美と依姫の幻想郷奮闘記
第84話 明日への挑戦4/4
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ち込んだのであった。
◇ ◇ ◇
今この草原では、先程まで凄まじい戦いがあった事など信じられない程に心地よく風で草々がそよぐ音だけが奏でられていた。
そんな中で勇美は大の字になって爽やかな気持ちで寝そべりながら言った。
「あ〜あ、あの勝負、勝てると思ったんだけどなぁ〜……」
そう言う勇美の表情は晴れ渡っているが、その口調にはやはり口惜しさが滲み出ている。
だが、そんな勇美に対してこう言う者がいた。
「何言っているの勇美? その言葉、そっくりそのまま貴方に返すわよ」
それは他でもない、綿月依姫から掛けられた言葉であった。それを彼女は勇美の側に座りながら言っていた。
その台詞と状況から判断される事。──それは勇美は依姫との勝負を相打ちにまで持ち込んだという事であった。
勿論勝てなかったというのは惜しい事であろう。だが、依姫相手に負けなかった……彼女に様々なハンデを設けていたとはいえ、それだけで十分に胸を張っていいだろう。
「はい、でも出来れば勝ちたかったですね」
「言うようになったじゃないの……。いいわ、また機会があったら受けて立つから」
そう言葉を交わした後、二人は互いに笑い合った。その喜びは今までで一番の宝物となるだろう。
そんな二人を豊姫と紫も温かく見守っていたのだった。
◇ ◇ ◇
その貴重な戦いの後暫くしてから。とうとう『その時』が来たのであった。今勇美と依姫と豊姫は永遠亭の入り口にいる。
「それでは勇美。暫しのお別れの時ね」
「はい」
そう、依姫はこれから月に帰るのである。彼女には月の守護者としての仕事が山ほどあるのだ。今まで地上に長期滞在していたのは勇美の為に些か無理をしていたのだから。
それに、月の民は長い間地上には住めないのだ、その身が穢れてしまうから。
「安心しなさい勇美。私とは離れていても神降ろしの契約は継続されるから力は使えるわ。それにこれからは暇を縫って機会があればここに来るから完全な別れという訳ではないからね」
「はい、また遇えるのを楽しみにしていますよ。──勿論その間も自分を磨く事を怠りませんから」
「ええ、よく言ったわ」
そう言って依姫は勇美の頭を優しく撫でたのである。勇美にとってやはり心地いい瞬間である。
そうして勇美を一頻り撫でた依姫は、今度は豊姫の方を向いた。
「では、お姉様。お願いします」
「ええ、承ったよ。私に任せなさいって」
依姫に言われた豊姫は得意気にウィンクで返した後、勇美の方へと向き直したのだ。
「勇美ちゃん、私達がいない間も頑張ってね。貴方なら大丈夫よ。何たって私が同志と見込んだ子なんだからね」
「はい、その期待に応えて見せますよ」
豊姫の励ましに勇美は堂々と言ってのけたのだ。そこには、かつて私がなんか
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