第二章 勇美と依姫の幻想郷奮闘記
第84話 明日への挑戦4/4
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今の状況は、正に師の喉元に喰らいつかんとしている所だった。
そして、勇美の狙いは依姫本人ではなく、彼女の足元なのであった。それは、クロテツキョジンが拳を振り下ろした時に起こったのだった。
それにより、拳の着弾点から激しい振動が走り──そして、そこから地面に亀裂が入ったのだ。
「!!」
依姫は咄嗟にそこから飛び退き、安定して立てる地面へとその身を置いた。ふと一息入れる依姫、取り敢えず一難を回避する事は出来たようだ。
確かにそう思われていたのであるが、事は急変したようである。先程で収まったと思われた振動がそれで終わる事はなく、再び周囲の大地は激しく揺れたのだ。
「っ!!」
そして、依姫が今いる場所にも地割れは進行していったのだ。だが咄嗟にそれも依姫は避けてみせる。
それは、剛よりも柔を重視した戦いをモットーとする依姫には造作もない事であったのだ。彼女は難なくそれらをかわして見せ、実に落ち着いた対処をしていっていた。
だが、ここで勇美は口角を上げる。目論みは彼女の思う方向へと進んでいたのだから。
ますます地面に亀裂が入るが、依姫はそれを次々にひらりとかわし続けていった。しかし、それにも限界があったのだ。
「っ!」
依姫が気付いた時には既に遅かった。いくらひらひらと身軽に舞う彼女と言えど、足場をことごとく砕かれては文字通り地に足を着けてはいられないというものである。
そして、地割れの衝撃により依姫は宙へと舞い上げられてしまったのだった。しかも、その際に彼女の神降ろしの補助となる刀も弾き飛ばされて近くの森に放り出されたのである。
それを密かに紫はスキマにて確保する。そのような貴重な物を無くさせる訳にはいかないからだ。
だが、今の勝負の最中に紫はそれを依姫に手渡す事はしなかったのだ。それは自分の落ち度で刀を手離してしまった依姫は、決してこの戦いの中では受け取らないだろう事を紫は良く理解しているからであった。
このままだと依姫は地割れに飲み込まれてしまうだろう。確かに八百万の神の力を借りられる依姫ならこの状況を打破する手段は確立出来るだろう。
だが、例によってこの戦いでは月で使用した力を順に一柱ずつしか使っていけない取り決めを依姫自ら己に課しているのだった。その条件下では今の状況に対処出来る術は存在してはいなかったのである。
(ここまでかしらね……)
しかし、依姫はそれを快く受け止める事とするのだった。世の中には自分で定めたルールで思い通りにならなくなるなら平気でそれを破る者も少なくないが、依姫はそのような理不尽な者達とは対極にある存在なのだから。
潔く流れを受け入れる事を心に決め、その身を重力に委ねる依姫。だが、ここで彼女にとって奇跡が起こったのである。
次々に巻き起こっていた地鳴りと地割れ。だ
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