第二章 勇美と依姫の幻想郷奮闘記
第84話 明日への挑戦4/4
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った。ただ巨大化しただけではなく、その外装も鋼で築きあげられた筋肉というべき重厚さが存在した。
その名を言い終えた勇美は、高らかにその鋼鉄の従者へと指令を下す。
「やりなさい、クロテツキョジン!」
その命を受けて、彼は猛々しくその鉄の喉から咆哮を放ったのであった。
それだけで辺りに衝撃が巻き起こり、激しく荒れ狂ったのである。
だが、この場にいる者達は誰一人とてそれに動揺したりはしなかったのだ。さすがは伊達に重役にまで登り詰めてはいないという事である。
(やっぱり、皆さんにとっては子供騙しだったかな……)
そう勇美は内省をするのだった。このような演出だけで驚いてくれる程、安い存在などではなかったのだと。
だが、ここからはパフォーマンスではない実行を見せるのだ。一吼え終わったクロテツキョジンはその巨体を動かすと、一気に削岩機のような鉄拳を依姫目掛けて振り下ろしたのである。
だが、依姫はそれをひらりといとも簡単にかわしてしまったのだ。彼女が避けた所にその巨大な拳が叩き込まれ、地面を派手に抉った。
そこには深々と大穴が形成されていた。さながら月のクレーターのようである。
そのような攻撃に当たったらひとたまりもないだろう。だが、それを前にして依姫は極めて冷淡にこう言った。
「貴方、正気かしら?」
それがこの攻撃に対する依姫の率直な意見であった。落ち着いた振る舞いから口にされるその意味は勿論、戦略を見誤っているという事である。
このような大雑把な攻撃では、正確な行動で戦う依姫にはまるで届きはしないという訳だ。しかも、今彼女は天宇受売命の力で更に身のこなしを高めているのである。
故に依姫は、勇美らしくない戦況の判断ミスだと些か落胆したのだった。
だが、それも仕方がない事なのかも知れないと彼女は思うのだった。寧ろ今まで自分との真剣勝負に着いてこれた事だけでも立派だったと。彼女が成長する所を焦って見てはいけないのだと思い直す事にした。
しかし、それこそ依姫の思い違いであった事が次に明らかとなる。
「いいえ、正気ですよ。依姫さん相手に力任せの攻撃は通用しない事はよく分かっています」
「それでは?」
「こうするんですよ、クロテツキョジン!」
言うと勇美は巨体の相棒へと再度指令を送る。それにより再びその鋼の腕から特大の鉄拳が放たれる。
「何度やっても!」
依姫はすかさずその攻撃をかわしてみせる。その展開はこの場の誰にも読める事なのであった。
だが、これこそ勇美の望む展開なのであった。
「かかりましたね♪」
自分でも依姫程の者にそのような言い草を勇美はするとは思っていなかったようで、内心自ら驚いていた。
だが、それ程までに今の勇美は敬愛する師といえる依姫と渡り合っている事の裏付けなのであった。
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