第二章 勇美と依姫の幻想郷奮闘記
第82話 明日への挑戦2/4
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たのだった。そう、勇美はただ単に妖夢や天子といった剣使いとは戦っていないのだ。その経験は抜かりなく彼女の糧となっていたのである。
「じゃあ、次は私が攻めますよ!」
言って勇美は剣になけなしの力を込めると、その反動で依姫との距離を取ったのだ。
剣で攻撃するには当然距離を詰めなくてはいけない。なのに彼女が敢えて距離を開けたのか、その理由はすぐに分かる事となる。
「この『一年戦争の光の剣』って、こういう事も出来るんですよね」
言いながら勇美は手に持った光の剣を、依姫から距離を置いたまま振り翳したのだ。するとその刃は鞭のようにしなりながら長く伸びて依姫に肉薄しようとしていた。
「面白い事するわね」
普通の剣では起こり得ないそのような状況にも依姫は動じずに、その攻撃に合わせて的確に剣を構えたのだ。
それにより、勇美の奇襲とも言えるような攻撃はいとも簡単に弾かれてしまったのだ。だが、勇美はそれで諦めなかったのだ。
このような剣を使う身として言語道断な手段を用いたのだ。それでいながら、全く歯が立たなかったでは格好がつかないというものである。
ましてや、依姫はこんな戦法に出た自分を容認してくれているのだ。だからこそ勇美はその心意気に応えなくてはいけないというものなのだ。
「はあっ!」
そう気合い一声を入れると、勇美は最早剣戟とは言えない攻撃を次々と打ち出していった。
「甘いわね」
だが、それを依姫は軽々と全て剣で切り払っていった。その動きには一切の無駄が無かったのだ。
そして、その依姫の剣の一振り一振りの度に刃から次々と光の粒が飛び散り宙を舞ったのである。その光景は正にプラネタリウムであった。
相手の攻撃をいなしつつも、美しく戦う事を依姫は忘れていなかったのだ。
それは、依姫が『弾幕使い』としての成長をした事の証であった。純粋な戦闘能力では既にほぼ限りなく洗練されていた依姫であったが、芸術的な戦いでの成長の余地はまだまだあったという事だ。
そして、その成長を行っていけたのは勇美がいてこそなのであった。故に依姫は心の中で密かに勇美に感謝の念を述べていた。
そのように思いながらも、彼女は勇美の攻撃を一切の抜かりもなくいなし続けていった。その様はまるで隙がなかったのだった。
「う〜ん……」
そして当然勇美はこれには困ってしまった。相手にはない変則的な動きをする剣を使ってもまるで押していける雰囲気というものが出てこないのだ。
これこそが堅実な依姫の魅力であり、一方で決して敵に回したくない要素でもあったのである。
そこまで勇美は認識して、そして口に出す。
「依姫さん、ごめんなさい。やっぱり私に『これ』は向いていないようです」
「ええ、構わないわ。寧ろ私の我がままに今まで付き合ってくれてありがとう♪」
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