第99話『予選D』
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に何を言われるかわかったもんじゃないから。
『ブルゥ……』
木にぶつかったダメージなんて瑣末なものだと、何事もなかったかのようにゆっくりとモンスターは緋翼の方を向く。もう一度突進する気なのだろう。何度も地面を踏み鳴らしている。──好都合だ。
『ブルァ!!』
「この一撃で沈めてあげるわ」
モンスターが突進してくるのを見てから、緋翼は左足を後ろに下げ、刀を横向きに構え直す。
"紅蓮斬"が弾かれた以上、並大抵の攻撃では歯が立たないだろう。それならば、"この技"を使うしかない。突っ込んでくる相手の勢いを利用して斬るカウンター技。その名も、
「──"不知火返し"」
『ブァッ……!?』
モンスターの突進を、今度は僅かな動作で右に避け、通り過ぎ様に焔の刀を素早く横に振り抜く。
直後、モンスターは先程の様に木にぶつかるよりも前に、音を立てながらその巨体を地面に倒れ伏せた。
「……ふぅ、上手くいったみたいね」
緋翼は額の汗を拭いながら、刀を下ろす。
腕輪を確認すると、『+7Pt』と表示されていた。うん、ちゃんと討伐できている。しかも予想通りの得点だ。これはおいしい。
「あ〜もうヒヤヒヤした〜!」
そうとわかった瞬間、緊張の糸が切れた緋翼は地面にへたり込んだ。
"不知火返し"とは、緋翼が唯一使えるカウンター技で、『突っ込んでくる相手限定』という、時と場合を選ぶ微妙な使い勝手をしている。
とはいえ、その威力は相手の突進の速さや勢いに比例して何倍にも膨れ上がるため、相手によっては緋翼の技の中で最高火力となりうる代物だ。
だがしかし、もしタイミングを違えれば、相手の攻撃に直撃することになるという一か八かの大技でもある。
今回は上手くいったが、いつも上手くいくとは限らない。だから正直、この猪とはもうやり合いたくな──
『ブルル……』
「えっ」
そんな緋翼の元に、新手のモンスターが現れた。それは猪の様な見た目をしており、鼻を鳴らしながら、真っ直ぐに緋翼を見据えている。──まるで、今にも突進しそうな雰囲気で。
「この、"不知火返し"ぃぃぃ!!」
こうして緋翼は、若干泣き目になりながらも、再び刀を振るうのだった。
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