第99話『予選D』
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そう心に決め、強引にスピードを上げるのだった。
*
「とりあえず上を目指して進んではいるが……あんまり進展はないな」
そうため息混じりに呟くのは伸太郎。彼は独りで迷宮の中をさ迷っている。
ちなみに、上を目指している、というのは、ゴールが地上にあると考えられるからだ。とはいえ、そんなことは誰だって思いつく範疇なので、もしかすると違う可能性もある。しかし、今はそれを当てにせざるを得なかった。
「近道はまだ見つからねぇのか……」
競技開始から10分は経っただろうか。
この迷路は山全体に広がっていてかなりの規模だと思うが、そろそろゴールした人が出てきてもおかしくない気がする。未だに誰とも遭遇しないし、とても不安だ。
「あ〜くそっ、同じような景色ばっかでゲシュタルト崩壊しそうだ」
右も左も前も後ろも全く同じ景色が広がり、頭の中できちんとマッピングしてなかったら、今頃同じ道をグルグルと回っていたに違いない。地下ゆえの暗さや閉塞感も、方向感覚を狂わせる要因だろう。
迷う前に、少しでも進展したいところだが──
「ん?」
そんな時、ある十字路で伸太郎は立ち止まる。
ちょうど前方、行き止まりになっているようだが、その壁に不自然にも松明が2本掲げられていたのだ。目を凝らして見れば、その下に何か台のような物が見える。
「まさか……」
行き止まりだというのに、伸太郎の足は迷うことなくそこに向かっていった。
ここに来て新たなパターン。それすなわち、
「これが近道の鍵ってことか」
眼前、土でできた四角い台の上に、立方体の石のキューブが乗っていた。パッと見は何かはわからなかったが、光にかざしてよく見てみると、キューブには一面を9つに分けるように線が引いてあり、分けられた部分のそれぞれに模様が付いている。
「これ、もしかしてルービックキューブか?」
ルール説明では、「近道を進むには知力が必要」とあった。それすなわち、近道の鍵として何かしらの問題やパズルが用意されていると考えるのが妥当だろうが、どうやらその通りだったらしい。
目の前にあるこの物体は、色の代わりに模様で区分されていることを除けば、まさしくルービックキューブだ。見たところ、どの面も揃ってはおらず、シャッフル済みである。
「つまり、これを揃えりゃ近道に進めるってことか」
そう零しながら、伸太郎は密かに口角を上げる。そしてキューブの全ての面に一通り目を通すと、早速カチャカチャと動かし始めた。
素人がルービックキューブを6面とも揃えるとなれば、難しいし時間もかかるだろう。よって、この近道を通ることは現実的ではない。しかし、
「……
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