第8話
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台のベッドがある。
ゲオルグはゆったりとした足取りでベッドに向かって歩いていく。
ベッドの脇に立つと、ベッドの上で眠る男性を無表情に見下ろした。
その顔を記憶にある写真と照合し、小さくうなずくと腰から下げていた
コンバットナイフに手を伸ばした。
数度大きく息をすると、右手に握ったそれをシーツの上から男性の胸に突き立てた。
直後、シーツが真っ赤に染まっていく。
ゲオルグはその様子を冷たい眼で一瞥すると、ガラス戸を開けてベランダに出た。
そしてガラス戸を外から閉めると、ガラスを蹴り飛ばした。
大きな音をたててガラスが割れるのを確認すると、柵を超えて
ベランダから飛び降りた。
ゲオルグの身体は地面に向かって加速していく。
だが地面から10メートルほどの高さから急速に減速しはじめ、
地面に降り立ったときには、かさりと小さな音を立てただけだった。
ゲオルグは走り出す。
防護服を解除すると、パーカーにダボダボのパンツというラフな格好になる。
数ブロック走ると、彼の行く先を遮るように1台の白いワゴン車が止まる。
ゲオルグはおかまいなしに車に向かって全速力で走り続ける。
ゲオルグが近づくと、車の後部ドアが開く。
次の瞬間、ゲオルグは地面を蹴り飛ばして車の中へと飛び込んだ。
彼の身体が完全に車の中に入ると同時にドアは閉められ、車は走り出した。
「3佐、お疲れ様です」
座席に伏せこんでいたゲオルグが身を起こして、
声をかけてきた助手席に座る男のほうを見た。
「ああ。手筈は判ってるな、曹長?」
ゲオルグの問いかけに、助手席の曹長はうなずいた。
「もちろんです。 あと、3佐の着替えを後ろに置いときましたので
着替えてください。あと3分で到着です」
「わかった」
ゲオルグはパーカーとカーゴパンツを脱ぐと、わきに置いてあった
トレーニングウェアに素早く着替えた。
まもなく、車は止まる。
「あとは任せたぞ」
「はい」
運転席と助手席に座る部下たちからの返事を聞き、ゲオルグは満足げにうなずくと
ドアを開けて車を降りた。
ゲオルグがドアを閉めると、車はすぐに走り去った。
そこは、ゲオルグたちが宿舎にしている建物の前だった。
ゲオルグはゆっくりと建物に向かって歩を進める。
建物の中に入り服についた雪を払っていると、奥から誰かの足音が聞こえ
ゲオルグは一瞬身構えた。
「お疲れ様です、ゲオルグさん」
「シンクレアか」
姿を現したのは寝間着がわりのトレーニングウェアを着たシンクレアだった。
「無事に帰ってこられてよかったですよ」
「まあな」
ゲオルグは不愛想に答えると、自分の部屋に向かって歩き出した。
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