第8話
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食を取り始めていた。
「おはよう」
ゲオルグは眠たげな目をして、頭をかきながら食堂に入ってくる。
部下たちから帰ってくる挨拶に応じながら、プレート皿に朝食を載せると
すでにパンにぱくついているシンクレアの隣に腰を下ろした。
「あ、おはようございます。 眠そうですね」
「ま、朝は苦手だからな」
苦笑しながらそう返すと、ゲオルグはテレビに目を向けつつ朝食に手を付け始めた。
テレビではちょうど朝のニュース番組を放送しているところだった。
『次のニュースです。
今朝未明、郊外の住宅地にあるマンションの一室でめった刺しにされた
遺体が発見されました』
「物騒ですね」
画面の中で女性のアナウンサーが殺人事件のニュースを伝えている中、
トレーを持ったシャッハがゲオルグの隣に腰を下ろした。
「そうですね。 治安は安定していると聞いていたんですが」
「ええ、私もです」
シャッハは画面に目線を向けながら顔をしかめる。
一方ゲオルグは、無表情にちらちらと画面に視線を送っていた。
『遺体で発見されたのは行政官の男性で、室内には男性の財布などが
そのまま残されており、管理局では怨恨による殺人事件とみて
捜査を進めているとのことです』
その事件についての報道はそれで終わり、画面では次のニュースに進む。
ゲオルグはカップのコーヒーをぐいっと呷ると、目を閉じた。
前日の夜、日付が変わるころのことである。
ゲオルグは防護服に身を包み、自身に割り当てられた部屋のベランダに立っていた。
目を閉じ、数回の深呼吸を繰り返したのち、再び目を開いたゲオルグの表情からは
感情が抜け落ちていた。
「行くか、レーベン」
《はい》
首をまず右に、続いて左に傾けたゲオルグの足元に魔法陣が広がる。
そして、彼の足はベランダの床面から離れる。
そのまま宙に浮かび上がると、郊外の住宅地に向かって飛び始めた。
10分ほど飛行すると、下には比較的大きな邸宅が並ぶ住宅街が広がり始める。
ゲオルグは前方に現れた高層マンションに向かって高度をさげていくと、
中層階の通路に音もなく着地した。
目の前の扉の部屋番号を確認すると、小さくうなずいて脇にあるパネルを
操作し始めた。
すぐに小さくかちゃりという音がして扉のロックが外れる。
ゲオルグは慎重にドアを開いて室内へと自らの身体を室内へと滑り込ませる。
明りの消えた室内は暗く、ゲオルグは目を凝らしながらゆっくりと
奥へと進んでいく。
細く続く廊下の奥にある扉をそっと押し開くと、それまでとは違って
月明かりにぼんやりと照らされた部屋に出た。
その奥、ベランダに面した大きなガラス戸の手前に一
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