溶原性細胞
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「号外! 号外!」
そんな声に、ハルトは足を止めた。
いつの間にかハルトとクトリは、見滝原西駅まで来ていた。
ラビットハウスの最寄り駅であり、少し大きめな駅であるそれは、ハルトにとってもう見慣れた場所であった。
「何だ?」
群がる人だかりに好奇心を刺激されたハルトは、彼らに並び、号外を受け取る。
「何ですか?」
「何だろ……お?」
その号外に、ハルトは言葉を失った。
『アマゾンの正体』
『人間がその正体と思われる』
『アマゾンの死骸より回収した細胞からは、人間の細胞が見つかった。研究により、アマゾンは人間が変異したものだということが判明した』
「やっぱり……」
その文章を読んでも、ハルトは驚かなかった。むしろ、これまでのアマゾンたちのことから、そうではないかと思っていた。
『現在、見滝原中央病院を中心に研究が進められている。もしもアマゾンを見つけた場合、速やかに通報し、避難すること』
「避難か……」
あの運動能力を持つアマゾンから逃げられる人が果たして何人いるのだろうか。と思いながら、ハルトは記事の続きに目を通した。
『この、人をアマゾンにしてしまう細胞について、見滝原中央病院の院長、フラダリ院長はこうコメントした』
「フラダリさん……」
クトリが、そこに記されている名前を呟いた。
それに構わず、ハルトは続きに目を通す。
『今回の件は、当院を中心に起こっております。皆様が当院に原因があると考えるのは理解できます。当院のプライドにかけて、アマゾン細胞の究明に尽力します』
そして、アマゾンへの変化に関して、こう書かれていた。
『我々は、この人間を変質させる細胞を、溶原性細胞と名付けました』
「うう……」
千翼は後悔した。
友奈から逃げるように離れたことではなく、この狭い裏路地に逃げ込んだことに。
「おいゴラァ! ぶつかってきてごめんなさいもなしたぁいい度胸だな!」
そう詰め寄ってきたのは、ボロボロの学ランを着たリーゼントの少年。大柄の図体により、まだ子供の千翼にはまるで山のようにも思えた。
「ぶ、ぶつかってきたのはそっちだろ!?」
少し怯えながら、千翼は敵意をむき出しにした。だが、それを見下ろしたリーゼントは、前置きなくグーで殴ってきた。
「がっ!」
咄嗟の防御などできず、体がふらつく。
リーゼントはさらに千翼を蹴り飛ばす。狭い路地のごみ箱に激突し、中身が散らかった。
さらに、リーゼントはノータイムでリーゼントが、千翼の胸倉を掴み上げる。
「ぐっ……あっ……」
「オレはこれでも見滝原じゃちっと名の知れたワルでな? お前のようなク
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