千翼
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「千翼!」
人目も憚らない大声で、クトリは千翼を探していた。
そんな彼女が視界の端に消えていくのを見送りながら、ハルトは聞き込みを続けた。
「すみません、あの、男の子見かけませんでしたか? 背丈はこれくらいの、小学生と中学生の間くらいの子なんですけど……」
やはりというか、今回も情報なし。
「ありがとうございます」
もう数えるのも諦めた。ハルトはため息をつき、クトリはどうかと彼女の後を追いかける。
「……嘘でしょ……」
その光景に、ハルトは言葉を失った。
「おーい、チー君! ……じゃなかった、千翼!」
なぜか自動販売機の裏に向かって、千翼の名前を叫ぶクトリ。
ゴミ箱の蓋を開けて、その中へ声をこだまさせるクトリ。
「どこー?」
「……クトリちゃん」
「千翼―? お姉ちゃん怒らないから、出てきて!」
「クトリちゃん!」
少し声を大きめにすると、ごみ箱よりクトリが顔を上げた。
美しい蒼に、無数の黒い埃が乗った。おまけにバナナが乗っており、それがハルトに笑いをこみ上げさせた。
「クトリちゃん……それ……ププッ」
「ん……? ……ふへえっ!?」
クトリは、その頭上の生ものに対し、奇声とともに投げ捨てた。
「い、いつの間にあんなの頭に乗ってたの?」
どこからどう考えても今君がゴミ箱に突っ込んだ時ですよ。と、いう言葉を飲み込み、ハルトは彼女の頭の埃を払う。
「〜〜〜〜〜!」
顔を真っ赤にして、クトリはハルトの手を払った。
「な、なに……!?」
「いや、何か、可愛いなって……」
「可愛っ……!」
さらにクトリの顔が膨張する。
「と、突然なんですか! それより、千翼を探さないと……あだっ!」
ハルトは初めて、天然で電柱に激突するという珍事を目撃した。
「いつつ……」
「大丈夫?」
「うん……」
少し涙目になったクトリ。彼女に笑いかけながら、ハルトは言った。
「こういうのは、聞き込みからがいいんじゃないかな? そうやって……」
めげないクトリが、ハルトの言葉よりも先に千翼を探している。主な捜索個所は、家の庭、犬小屋の中「ワンワン!」「キャーッ!」、電柱の裏。
「グスン……全然見つからない……」
犬との格闘の末、ボロボロになったクトリがトボトボ歩いてきた。
「いつも千翼がかくれんぼで隠れそうなところは粗方探したのに……」
「少なくとも隠れんぼに使えそうなところは外してもいいと思うよ」
「ハッ……! そ、そんなことわかってます!」
明らかに分かっていなかった。チー君が知らないところに隠れるなんて想像もしていなかったという顔をしている。
「……仕
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