第七十六部第三章 エウロパから見た死闘その四十四
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「サハラでね」
「あの地域の戦士達がですか」
「戦いの中でね」
「彼等の誇りを見せていますか」
「そうも思うよ、ヒルデルセン伯爵にもお話したし」
彼とのその話を思い出しながらの言葉だ。
「今も思うことだけれど」
「何でしょうか」
「彼等の戦争は今はとてつもない激戦だね」
「伝え聞く限りそうですね」
執事はテレビやネットのニュースで知っている、当然新聞でもだ。
「古今東西なかったまでだとか」
「そう、それは国力の多大な消耗だけれど」
「それでもですか」
「彼等は誇りを以て戦っているね」
このことは認めるのだった。
「死力を尽くしてね」
「あの時の旦那様がそうであった様に」
「私なぞ比べものにならないね」
自分は軍人としての能力がないと自覚していることと勇気がないとも考えてそのうえで言った言葉である。
「最早ね」
「彼等のそれは」
「そう、そしてね」
「その誇りで以てですか」
「彼等が戦っているのは事実だね」
このことはというのだ。
「紛れもなくね」
「そしてその誇りは」
「否定しないよ」
断じてという言葉だった。
「人の誇りを否定することはね」
「それは、ですか」
「人としてすべきことじゃないからね」
だからだというのだ。
「サハラは敵だけれどね」
「それでもですね」
「誇りは否定しないよ」
執事にこのことを話した。
「断じてね」
「そしてそれはですね」
「私の誇りだよ」
他人の誇りを否定しない、それは自身のポリシーだというのだ。
「私個人のね」
「そしてランズハイム伯爵家のですね」
「そう、代々のね」
「他者を愚弄するな」
「その家訓があるね」
「愚弄しないということはですね」
「誇りもだよ」
それもというのだ。
「否定しないということでもあるね」
「そう、それでね」
だからだというのだ。
「他の人の誇りは否定しないよ」
「相手が誰であってもですね」
「そう、誰でもね」
例えそれが敵国の軍人であってもなのだ。このことはサハラだけでなくエウロパの宿敵である連合に対しても同じだ。
「それはしないよ」
「非常に素晴らしいことです」
執事は主の言葉に笑顔で応えた。
「やはりです」
「他の人の誇りを否定することはね」
「誇りはその人を立たせて動かせるものです」
「それを否定することはね」
「その人を全否定するに等しいかと」
「それも頭ごなしにね」
「そしてそれはです」
そうした否定はというのだ、全否定と言っていいまでのそれは。
「その人の器もです」
「狭めてしまうね」
「どうしても、ですから」
「私がそれをしないことは」
「素晴らしいことです」
まさにというのだ。
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