チー君の名前
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丈夫なの?」
一瞬、チー君の頬がピクっと動いたような気がした。
クトリは「ああ、それね」と頷き、
「今は大変だよ。昨日の事件から、今にいたるまで報道陣が押しかけて大騒ぎ。フラダリ院長が、病院にいても仕方ないから、木綿季を連れて外を回ってこいって言われたんだ。他の子供たちは、近くの勉強施設だよ」
「やっぱり現場は大変だよね……」
「ねえ、可奈美!」
クトリの隣に座る木綿季の声に、可奈美はカウンターから出てきた。
「オススメは?」
純真無垢な木綿季に、可奈美は「うーん……」と首を傾げる。
「この、ココアブレンドって、おいしいよ」
「じゃあそれ! ココアブレンドお願いします!」
「はーい! ちょっと待っててね!」
可奈美に代わり、接客のココアがカウンターに入る。
ココアを見送った木綿季は、そのまま可奈美に「それでそれで!」と話し始めた。
話の内容はハルトにはさっぱりわからないが、出てくる単語一つ一つを拾うと、どうやら剣の話をしているようだった。無垢な病弱少女に可奈美の剣術バカがうつったか。
「元気な子だな」
「これまで病室から出てこれなかったからね。その分、元気が爆発しているんだよ」
クトリがにっこりとほほ笑んだ。
「へえ……チー君は……」
「そんな子供っぽい名前で呼ばないでよ」
だが、チー君はハルトの言葉をぶっつりと切った。
「俺だってもう子供じゃないんだ。そんな変な呼び方、やめてよ」
「ああ、そっか……そうだよね……もうそんな呼び名で呼ばれる感じじゃないよね……あれ? なんだろう、ちょっと変な感じ」
ハルトは、ここで首を傾げた。
「何が?」
チー君がぎょろりとかみつく。ハルトは「ごめんごめん」と謝罪し、
「チー君、名前なんだっけ?」
「あれ? ハルト君、教えてなかったっけ?」
クトリの言葉に首を振る。
「ああ。ずっとチー君って……呼んで……た……」
言葉を口にしながら、ハルトの中で違和感が大きくなっていく。
初めて見滝原中央病院に訪れ、チー君と出会ったのは十一月初頭。
フェニックスが現れ、なぜか病院から近くない公園にチー君がいたのはその数日後。
アマゾンが四体出現した時、チー君という呼び名を受け入れたのは昨日、さらに数日後。
まだ、一か月も経過していない。
チー君というあだ名が定着していた子供が、たった一か月もたたないうちに、チー君という呼び名を変なあだ名とするまでになるだろうか。
「ブラック!」
物思いにふけるハルトを、チー君の声が呼び覚ました。
「え? な、何?」
「だから! 注文! ブラックコーヒー!」
名前の問いをすっ飛
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