チー君の名前
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少女だった。車椅子に座った、黒く長い髪と、病弱そうな肌色の少女は、目をキラキラさせながらラビットハウス内を見渡している。
「木綿季ちゃん!?」
この声は、可奈美から。可奈美は信じられないという眼差しで、車椅子の少女へ駆け寄った。
「どうして? もう外まで出てきていいの?」
「えへへ。もう、体もどんどん良くなっているんだ。だから、可奈美さんの剣術、どんどんできるようになれるよ!」
元気に答える木綿季という少女。
それに対し、ハルトの目線は、その車椅子を押す人物に当てられていた。
「クトリちゃん……?」
蒼い髪の少女、クトリ・ノタ・セニオリス。日本人の名前ではないが、どうやら日本、それも見滝原の生まれらしい。
「どうしてここに?」
「木綿季ちゃんのリハビリだよ」
「リハビリ?」
クトリはにっこりとほほ笑む。
「この子、ずっと病院で寝たきりだったから、せっかく体も快方だし、外に行こうって」
「こういうのって、患者を外に連れ出してもいいものなの?」
「街を歩いていいって院長から許可をもらったから。ほら、外出許可証」
クトリはそう言って、フラダリ院長のサインが書かれた用紙を持ち出した。
「それで、見滝原の色んなところを回っていたんだけど、まさかここに君が働いていたなんてね」
「もしかして偶然?」
「偶然偶然。ほら、チー君も入って」
クトリの声に、玄関の外にいた少年も入ってくる。チー君は、少しふてくされたような表情で入ってきた。
「……あれ? チー君、そんなに背が高かったっけ?」
ハルトは目をこすった。
おおよそ小学生高学年の背丈らしいチー君。レザーコートとダメージジーンズの彼は、「別にどうでもいいだろ」とぶっきらぼうに答えた。
「あれ? しかもなんか反抗期?」
「ちげーし」
「まあまあ。お客様。こちらへどうぞ」
ココアが割って入り、クトリに会釈して木綿季の車椅子を代わる。テーブル席、その奥にクトリ、その隣へ、ココアが木綿季を座らせた。
「はい。君も!」
ココアがチー君の肩をポンポンと叩いた。チー君は仏頂面のまま、二人の向かいの席に座る。
「それではこちら、メニューになります」
ハルトはそう言って、ラミネート加工されたメニューを人数分机に置いた。
「うわぁ! 私、喫茶店来るの初めてなんだ! こういうの、大人っぽい!」
木綿季が、目をキラキラさせてメニューの品目一つ一つに感激している。
「そうだね。私もこういう喫茶店は久しぶりかも」
妙に通いなれたような口ぶりをしながら、クトリは言った。
「クトリちゃん。ちょうどさっきまで、アマゾンのこと話してたんだけどさ。病院大
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