第百十六話 摺上原の合戦その六
[8]前話 [2]次話
「それでじゃ」
「我等はですな」
「焦らずな」
「待つ戦をしますな」
「そうする、では今は凌ぐぞ」
「わかり申した」
成実は政宗のその言葉に頷いた。
「それではです」
「風の流れが変わるのを待つな」
「南は湖です」
猪苗代湖のことをだ、片倉は話した。
「そして北は山、進むか退くかです」
「そうした戦であるな」
「ここで我等は確かにです」
「猪苗代の城があるからな」
「退けますが芦名家は違います」
「ここで負ければもうな」
「山を退きです」
そうしてというのだ。
「さらに」
「川もな」
「そのまま崩れてしまいます」
「我等は会津まで攻められる」
「そうしたことになりますな」
「だからな」
それ故にとだ、政宗は片倉に話した。
「我等は待つ、焦らずな」
「戦いますな」
「そうする、では翌朝にな」
明日のその時にというのだ。
「出陣するぞ」
「わかり申した」
「では皆今宵はよく寝るのじゃ」
明日の戦に備えてというのだ。
「そしてじゃ」
「そのうえで、ですな」
「明日は勝つぞ」
こう言ってだった。
政宗はこの夜は兵達にたらふく食わせたうえでよく休ませた、そうして朝になると出陣してだった。
芦名家の軍勢と対峙した、そうしてだった。
風に乗って攻めてきた敵軍を見て全軍に指示を出した。
「よいな、まずはな」
「はい、守りを固め」
「敵を寄せ付けぬ」
「そうしますな」
「敵は風に乗って弓矢も使ってくるが」
それでもというのだ。
「陣笠を確かに被りさらに上に覆いをしてじゃ」
「弓矢を防ぎますな」
小次郎が言ってきた。
「そして槍や刀で突っ込んでくるならば」
「その時は長槍でじゃ」
伊達家の切り札の一つであるこれでというのだ。
「防ぐ、そして敵を寄せ付けず」
「しかと守り」
「時を待て、確かに風に乗った矢は強いが」
「それでもですな」
「しかと守っていればな」
「防げますな」
「だからじゃ」
それでというのだ。
「今はな」
「風が変わるのをですな」
「待つ、そして風が変われば」
その時にというのだ。
「よいな、何時でも鉄砲を撃てる様にする」
「そうしておきますな」
「そして風が変わった瞬間にな」
「撃ちますな」
「そこからじゃ」
「鉄砲騎馬隊も使い」
「そしてじゃ」
「一気に攻めますな」
「そうする、とにかく今は待つのじゃ」
そうするというのだ。
「よいな」
「それでは」
小次郎は政宗の言葉に頷いた、そうしてだった。
彼も兵達に護らせた、風に乗った芦名家の攻めは結構なものだった。だが伊達家の軍勢は今は守っていた。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ