時代はIoTだが、IoTはよく見ると泣いている顔に見える話
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能性もある。一刻も早く打開しなければ信頼を失う。
「総一郎」
焦りモードに再度切り替わったところで声をかけられたため、心臓が跳ねる。
「い、いや、隼人君。これは違うんだ。僕は――」
「あれ? あ、ほんとだ。この答え違うな。ありがと!」
(――!?)
どうやら疑われてはいなかったようだが、事態は悪化する。
隼人がTシャツを脱ぎ始めたのである。
「よっと」
初めて見る黒のインナー一枚の姿。
ピチピチゆえに露になった体のラインは、実に野球部のエースらしいものだった。
締まった肩と二の腕。無駄な脂肪などなさそうだ。
さらに。
二人が円卓を挟んで真正面ではなく斜めに座っているため、なおのことよくわかる……程よく盛り上がり弾力のありそうな、胸。
けしからんどころではない。
(こ、これは……眼福…………なんて思っている場合ではない)
頭を現実世界に引き戻すと、置いていたスマホを持ち上げ、顔に近づける。
興味よりも、ますます増した焦りが勝った。
(早く温度を下げなければ……あ、しまった、アプリを閉じてしまった……早くもう一度温度設定を……あっ、違う、カメラじゃない。ええと……あっ――)
パシャ。
(○▼※△☆▲※◎★●――!!)
手が震えてカメラのシャッターボタンを誤タッチしてしまった。
しかもそのときスマホは真正面ではなく、無情にも彼の方向を向いていた。
当然、彼は気づいた。
「ん? いま写真撮ったのか?」
驚いたように総一郎のほうを向き、そう言った。
(あ、僕終わった……)
手にしていたスマホが、ストンと落下した。
続けてエアコン、カーテン、掛け時計、蛍光灯、すべてが落下した気がした。
さすがにこれはリカバリー不可能。
土下座? 謝罪会見? 謹慎? YouTuberに転向?
一通り頭が混乱したのちに、総一郎の頭が髪ごと真っ白になっていく。
しかし――。
彼は驚いた顔をすぐに崩すと、シャーペンを円卓に置いた。
「お前だけズルいぞ! 俺も撮っていいか?」
疑問形だが、隼人は総一郎の回答を待たず、満面の笑みでスマホを向けてくる。
「あ、手ぶらだとアレだから、コレ持ってくれ」
「え? あ、ああ」
バッグから取り出し渡されたのは、一個の野球ボール。汚れを拭いた跡があった。
「もうちょっと笑ってもらってもいいかー?」
展開に戸惑う総一郎だったが、なんとか笑顔を作る。
パシャ。
「一回撮ってみたかったんだよなー。サンキュ! あ、二人一緒のやつも撮ろうぜ」
「え? え? ああ、僕は構わないが……」
サッと総一郎の横に移動し
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