時代はIoTだが、IoTはよく見ると泣いている顔に見える話
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レーのパンツとネイビーのポロシャツという格好である。
隼人が問題を解き始める。
それを確認すると、総一郎はスマホをちゃぶ台の上に置いた。
立ち上がっているのは、エアコン操作アプリ。
(時代はIoT。便利な世の中だ)
IoT。Internet of Things。モノのインターネット。
新しいエアコンは無線LANを搭載しており、流行りのIoTに対応していた。スマホアプリで細かい操作ができるのである。
(もう少し温度を下げたほうがいいかな?)
今現在、総一郎には『普通』という体感温度である。暑くも寒くもない。快適だ。
が、隼人は前に見た練習試合にて、かなり汗をかいているように見えた。
彼は運動選手。代謝が普通の人間よりもよいのだろう。『暑がり』の可能性がある。
総一郎はそう思ってボタンを押そうとする……
と、そこで。
また一つ、案が勝手に降りてきた。
総一郎は暑さが苦手ではない。
そして隼人は総一郎の予想では暑がり。
それはつまり、総一郎は耐えられるが隼人は耐えられない、という黄金の温度帯が存在することになる。
ジワジワ温度を上げていけば、確実にそのゴールデンゾーンに到達できるだろう。そうなれば彼はTシャツを脱いでインナー一枚に――。
(いや、駄目だぞ?)
金曜日に浮かんだ愚案の類似ヴァージョンを、すぐに頭から消去した。
絶対に温度を上げるなよ、と自分に言い聞かせてから、慎重に設定温度を下げるボタンを押した。
しかし。
(ん。少し暑くなってきたな。どうなっている?)
間違いなく設定温度は下げている。それで体感温度が上がってきているのは明らかにおかしい。
総一郎は不思議に思いながらも、再度アプリのボタンを押し、さらに温度を下げてみた。
ところが。
(――!?)
なおも暑くなる。
感じるエアコンからの風も、まったく涼しくない。
総一郎も汗ばむレベルになってきた。
総一郎は隼人のほうを見た。
問題を解いている彼の顔には、粒の大きな汗。
汗腺の鍛えられている運動選手は、成分が水に近くサラサラな汗をかくという。
焦る気持ちとは裏腹に、その爽やかな輝きがとてもまばゆく感じた。
彼がその汗を、いつのまにか首にかけていたスポーツタオルで拭う。
先日見た、練習試合での彼の雄姿が頭に蘇る。
なんと爽やかな――
と思っている場合でない。
総一郎は頭を現実世界に引き戻した。
なぜか愚案を実行するかたちになってしまっている。
どうにかしなければならない。
さすがに彼も室温が不自然であるとは思っているはず。
すでに「意図的ではないか」と不信感を抱いている可
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