入れない病院
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「ええ……入れないの……」
可奈美は口を酸っぱくした。
『見滝原病院に怪物現る』というネットニュースを見かけて、ラビットハウスより飛んできた可奈美は、病院の現状に、見込みの甘さを痛感した。
ニュースで見ていたときよりも人数が増えているように思える。きっと応援やら増えた野次馬やらがいるのだろう。
広大な敷地の入り口なだけあって、車が何台も通れる幅のある通路。そこを通行止めとするように警察の立ち入り禁止テープが広がっている。
「あのっ……すいません……っ!」
人々を分け入りながら、テープのところまで突き進む。
「一体どういうことなんですか?」
何やら聞き覚えのある声が頭上からした。見上げれば、水色のダウンジャケットがなだめる警官へ大声で文句を言っている。
どこかで見たことある人に背を向けて、可奈美は正面からの突入を諦めた。
「どうしよう……」
広大な敷地だというのに、他に入れそうな場所も全て人で埋まっている。
一人だと手詰まりだとあきらめた可奈美は、スマホのアドレス帳よりハルトの名前をタッチする。数回のコールののち、ハルトの『はい』という声が聞こえてきた。
「あ、ハルトさん? 今どこにいるの?」
『公園だけど』
「公園?」
『ああ。それがどうかしたの?』
「いや、ハルトさんニュースを見て出て行ったから病院にいるのかなって思ったんだけど」
『さっきまでいたよ。この前の怪物と同類が出てきてさ』
「それ、ニュースになってるよ。どうしてここにいないの? さっき真司さん見かけたんだけど」
可奈美の視界の端では、記者に混じって真司が院長のフラダリを問い詰めている。警官たちが彼の周囲をボディガードのように守っているが、記者たちの怒涛の質問にはほとんど無意味だったが、フラダリは整然とした態度で、関係ないと答えているようだった。
『真司さん、昔記者やってたらしいし、友奈ちゃんも残ってるらしいし。俺まで残る必要ないだろうかなって』
「必要ないって……」
可奈美は苦笑いを浮かべた。
ハルトは続ける。
『それに、いますごい数の記者がいるでしょ? いちおうウィザードの姿見られてるし、ボロが出ないとも限らないから。友奈ちゃんはそれでもいますって言ってたけど』
「結構ハルトさん、変なところチキンだよね」
『慎重と言いなさい』
ハルトの声に笑って答えながら、可奈美は続ける。
「でもハルトさん、この前手品のタネなくなったんでしょ? 何してるの?」
『別に素手でもできることはあるよ』
「何?」
『内緒。それじゃ、そろそろ切るよ』
何やらあわただしい。時間を無駄にするのも申し訳ないなと、可奈美は「それじゃあ、また後で」と通話を切る。
改めて、可
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