入れない病院
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奈美は友奈へ連絡を試みる。だが、聞こえてくるのは呼び出し音だけで、彼女の声は全く帰ってこない。
「友奈ちゃんどこにいるんだろう?」
可奈美がキョロキョロと見渡しながら呟く。人は、病院へ入ろうとする人と、それを遠目に眺める者に二分される。
可奈美は背負ったギターケースから千鳥を取り出しながら、すぐそばを通りかかった警官を捕まえる。
「あの、すみません」
「何だ……質問には答えんぞ」
苛立った表情の警官へ、可奈美は千鳥を見せた。
「私は特別祭祀機動隊です! 私にも手伝わせてください!」
「はあ? 刀使にヘルプを求めた記憶はないぞ。悪戯ならやめて帰りなさい」
「悪戯じゃない……私は……ほら!」
可奈美は、自らの学生証を見せつける。自らの顔写真がプリントされたものであり、可奈美の刀使としての証明の一つだった・
「美濃関学院の正式な刀使です!」
だが、警官はそれを無視した。まるで見ていないかのように、可奈美の手を振りほどく。
「いいから! ここは大人に任せなさい!」
「ええっ!?」
可奈美は警官に食い下がる。
「どうして!? 危険な怪物がいたんでしょ? だったら、刀使がいた方が……」
「あり得ない! 漏出問題で面倒ごとを世の中にまき散らした連中のことなど信用できるか!」
警官の言葉に、可奈美は口を噤む。
警官は少し気難しそうな表情を浮かべた後、「とにかく、気持ちだけ受け取っておくから、帰りなさい」と、そそくさと去っていった。
「……」
可奈美は怪訝な表情で彼を見送る。
木綿季が心配なのだが、病院に入らない限りなにもできない。友奈に再び電話をかけるも、返事はなかった。
「ねえ、お願い! 通してよ!」
スマホをしまったとき、ちょうどそんな声が可奈美の視線を集めた。
同じくらいの年の少女が、警察へそう訴えていた。
白い、見滝原中学の制服を着た少女。青いボブカットが特徴の彼女は、時折まどかとラビットハウスに来るのを見たことがある。
可奈美と同じように、捜査している警察へ中に入れてくれと頼みこんでいる。
「確か……さやかちゃん?」
美樹さやか。友達と同じ名前だなということで、可奈美も覚えていた。
最も、基本クールな紗耶香とは違い、こちらはかなり元気な子である。
さやかがしょぼんとした表情でいるところに、可奈美は肩をたたく。
「……あ?」
死んだような目で振り返るさやか。可奈美は「こんにちは」と、愛想よく挨拶した。
しばらく可奈美を見つめていたさやかは、やがてこちらを指さした。
「ラビットハウスの人」
「うん! 可奈美だよ」
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