第五百九十一話 巨匠の嫉妬その七
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「果たして」
「難しいどころだね」
ジミーもこう言った。
「そこは」
「そうだね」
「敵が多いことは嫌だから」
「普通の人はそうだよね」
「いいことないから」
「それも何一つとして」
「だからね」
こうジョルジュに話した。
「この二人の人間性は見習ったら駄目だね」
「僕もそう思うよ、ただね」
「ただ?」
「見習おうという人もいないだろうし」
そもそもとだ、ジョルジュは言った。
「それにね」
「それに?」
「そうそうなれる人間性じゃないよね」
「それはね」
ジミーも否定しなかった。
「二人共ね」
「あまりにも凄過ぎるからね」
「悪い意味でね」
「そこまでだとね」
「見習おうとしても」
「そうそうはなれないね」
「まずね」
二人で真剣な顔で話した、そしてだった。
ジミーはあらためてジョルジュに言った。
「この人達は確かに嫉妬とは無縁だったよ」
「嫉妬よりもまずいもの一杯持ってるけれどね」
「あと怠け者でもなかったから」
「そのことも確かだね」
「けれどね」
「それ以外の問題点があまりにもね」
「強烈で」
それでというのだ。
「問題だよ」
「本当にそうだね」
「手塚治虫は嫉妬心があったけれど」
「その二人よりはましだね」
「人間としてね」
「別に尊大でも偏屈でもなかったね」
「うん、それどころか嫉妬を昇華させる様な」
その心はあってもというのだ。
「そうした人だったよ」
「ずっとましだね、ベートーベンよりも」
「人間としてね」
「というかベートーベンは悪人じゃなくても」
ジョルジュはそれでもと言った。
「けれどね」
「お付き合いしにくいね」
「そんな人だったことは事実だね」
「そうだね、あとモーツァルトは悪意はなくても」
無邪気でもというのだ。
「他の人への配慮はね」
「なかったんだ」
「そうした人だったみたいだよ」
「それはそれで問題だね」
「そうだね」
実際にという返事だった。
「幾ら悪気がなくても」
「どうしてもね、ただね」
「ただ?」
「天才ってのは嫉妬しないのかな」
こうもだ、ジミーは話した。
「そうなのかな」
「自分に絶対の自信があってしかもずっとそのことに打ち込んでいるから」
「もう嫉妬することなんてね」
それこそというのだ。
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