第九十一話 ゲーニッツ、暴れ回るのことその一
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第九十一話 ゲーニッツ、暴れ回るのこと
都の南に集結している白装束の軍勢、その中でだ。
社は腕を組み前を見据えながら隣にいるゲーニッツに話した。
「面白い戦いになりそうだな」
「はい、まさに決戦ですね」
「暴れるよな」
「それはお互いのことかと」
礼儀正しい動作で答えるゲーニッツだった。
「貴方もですね」
「ああ、今から楽しみだぜ」
社は実際に楽しげな笑みを浮かべて言葉を返す。
「こっちの世界の連中も腕が立つしな」
「しかも私達の世界からもです」
「全員来てるからな」
「楽しみなことが実に多いです」
「で、どうやって暴れるつもりなんだ?」
社はゲーニッツにだ。どうした暴れ方をするのかも問うた。
「風を使うのは当然にしてもな」
「色々と考えています」
「色々とか」
「どうして戦うのかを考えるのもまた楽しみです」
ゲーニッツも前を見ていた。目の前にいる連合軍を見てだ。
「さて、それではです」
「いよいよ決戦だな」
「そうなります」
「若しもです」
二人のところに影の様にだ。于吉が現れて言ってきた。
「ここでことが成就せずともです」
「何だ?不吉なことを言うな」
「若しここで敗れてもですか」
「はい、それでも次の手は用意してあります」
そうだというのである。
「しかも三つです」
「あら、それはまた随分と手が込んでいるわね」
「三段の備えなんて」
バイスとマチュアもだった。影から出て来ての言葉だった。
「ここで失敗しても備えはあるなんて」
「慎重なのね」
「ことを為すにはあらゆる事態を想定していかなければなりません」
于吉は思わせぶりな笑みも浮かべてバイスとマチュアにも話す。
「既に定軍山と赤壁にです」
「西と南ね」
「それぞれなのね」
「ここから見ればそうなりますね」
定軍山と赤壁の場所、それはそこにあるということも確認される。
「定軍山には隠れる場所とあらかじめ念を集める場所を置いています」
「若しもここで敗れあの本に何かあっても」
「その場合でもなのね」
「はい、置いています」
そのだ。定軍山にだというのだ。
「そして赤壁にもです」
「あの場所は確かじゃ」
朧が言う。やはり何時の間にか出て来ていた。
「長江の。あそこじゃな」
「はい、水です」
于吉はその赤壁についても話すのだった。
「あの場所に私達がいるという話を流してです」
「成程のう。それであの者達を呼び出してじゃな」
「そこで皆殺しにします」
于吉の笑みに邪悪なものが宿る。ドス黒い、闇の笑みだ。
「その断末魔の念を集め邪魔者も消します」
「いい考えじゃ。それも置くのじゃな」
「はい、既に置いています
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