夜闇クライシス
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太陽が完全に沈み、夜が訪れた。この時間帯はヴァンパイアの力が増す……正確には元の力を発揮できると表すべきだろうが、だからと言って戦う時間を選べる状況でもない。
この黒薔薇の剣は刺突剣だから現在の私は突き技を主軸にし、攻撃時に魔法を交える戦闘スタイルで挑んでいる。この剣を与えた存在が魔法にエナジーを送ってくれるおかげで、フェイト・テスタロッサと同じく魔法のダメージもちゃんと通るようになったのだ。
「剣追ッ!」
体勢を低く瞬発力を損なわせず、相手の柔軟な動きから繰り出される攻撃を紙一重でかわすのと同時に、連続突きを放つ。夜天の魔導書の立場からすると、剣を交えるというのは烈火の将シグナムが主だったが、管制人格たる私も剣士の真似事ならできる。流石に剣の技量は本職である彼女の方が上だろうがな……。
「一応警戒していましたが、やはり壊れた人形風情ではこの程度なんですねぇ」
私の連続突きを全ていなしつつ、傲慢な笑みを崩さず挑発してくるポリドリだが、それが私の冷静さを奪う策であることは察している。少しでも冷静さを失えば、奴は即座に動きを変えて追い込んでくるに違いない。だから今までの攻防では、辛うじて隙を突けるカウンターしか当てられていない。しかもこの数分の戦闘中にその隙も塞がれてカウンターも対応されてしまい、今ではこちらの一方的な防戦となっている。
そもそもポリドリの動きについてだが、例えばこちらの攻撃に対してワイヤーで引っ張られるように体を月状に曲げたり、あり得ないタイミングでスライド移動をしたり、軟体生物のように上半身を伸ばして反撃してきたりと、人体の動きを超越したあまりに柔軟過ぎる戦術を披露してくるため、見ていて気持ち悪くなってくる。ヒトの動きを見慣れていれば見慣れているほど、やりにくい相手であった。
「―――飽きました」
「何だと!? うわっ!」
見下げる目でポリドリがこちらに手を向けてきたその直後、全身を鷲づかみにされるような圧迫感と共に足が勝手に床から離れる。この感覚……奴のサイコキネシスか!
「く、負けるか!!」
こちらも負けじと飛行魔法を展開、サイコキネシスの拘束から逃れようと魔力を注ぎ込む。網の中を無理やり進もうとする感覚に襲われるが、サイコキネシスに抗えているのは確かだ。しかし本来、屋内での飛行魔法を用いた高速移動はあまり推奨されないものだ。なぜなら、
「愚かな。ワタクシのサイコキネシスにそんな浅知恵で対抗しようとは……」
そう言ってポリドリはサイコキネシスのベクトルを逆方向に切り替えた。私の飛行魔法を抑えていた力が急に逆方向……即ち、飛行魔法と同じ方向に同じだけ力がかかることになれば何が起こるか、物理を多少嗜んでいればすぐに察せるだろう。
「あ、しまっ―――ぶはっ!?」
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