第三章
[8]前話
「お決めになりましたら当店に連絡して下さい」
「電話でいいよな」
「メールでも」
「そうか、じゃあまた連絡するな」
「それじゃあな」
「はい、またいらして下さい」
「ああ、そうするな」
店長にこう返してだった。
マリオッティは店を出て家に帰ってからも考えた、その中で夕食を自分で作って食べてワインもしこたま飲んだ。
その中でペットのアントニウスと話したが鰐なので彼は喋らなかった、だから実質一人で考え続けてだった。
ワインが三本目になったところで彼は遂に決断した、そして形態を出して。
「ご両親にか」
「月面ツアー譲ったのか」
「そうしたのかよ」
「あれこれ考えたけれどな」
それでもというのだ。
「やっぱりな」
「それが一番だってか」
「考えてか」
「それで譲ったんだな」
「親父もお袋も最近旅行に行ってないしな」
それにというのだ。
「それなら俺が行くよりもいいって思ってな」
「それでか」
「ご両親に譲ったか」
「そうしたんだな」
「ああ、たまにはこうしたこともいいだろ」
彼は笑ってこうも言った。
「逃がした魚は大きいと思うけれどな」
「まあ親孝行はするに限るな」
「まともな親御さんならだけれどな」
「それでもな」
「ああ、いいからな」
それでというのだ。
「譲ったんだよ、親父もお袋も喜んでくれたよ」
「それは何よりだな」
「じゃあそのことをよしとしてな」
「そうしてだな」
「俺は今度はスイスに行ってな」
そうしてというのだ。
「それでな」
「また旅行楽しむんだな」
「そうするんだな」
「ああ、そうするな。月旅行はまた機会があればだよ」
行くとだ、マリオッティは友人達に笑って話した。そうして今度行くスイスの話をしていった。両親が月に行く時は見送りに行って出迎えもした。
彼はそれからも旅行を楽しんだがやがてだった。
月旅行が彼が抽選に当たった時よりもずっと楽にかつ安く出来る様になってからこの時の家族である妻そして二人の娘と共に月に行った、鰐のアントニウスも鰐は長生きなので一緒だった。それで家族で行った月旅行は実に楽しくかつ記憶に残るものだった。この時彼は月に行って本当によかったと思った。
月面ツアー 完
2020・9・20
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