第四章
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「私も出来るのね」
「そうだよな」
「沙織ちゃんも最後の最後まで出来る」
「そうなんだな」
「万全にしていれば」
「出来るのね、そのことがわかったわ」
沙織は満面の笑顔で言った、そうしてだった。
これからも最後の最後まで万全にやっていこうと気持ちを明るくさせた。そした時こそ気を引き締めてと決意して。だが。
それは沙織にとっては中々難しくてだった。
母は家で沙織が作ったハンバーグを食べつつ少し苦笑いになって述べた。
「ちょっとね」
「足りないの?」
「おソースの隠し味にお醤油入れたでしょ」
「ええ」
「それが多くて」
それでというのだ。
「おソースの味が少し崩れてるわよ」
「そうなの」
「ハンバーグの作り方も焼き加減も凄くよくて」
そこまでは完璧でというのだ。
「一緒に作ったサラダやスープもいいのに」
「おソースがなの」
「それが少しね」
隠し味の筈の醤油が多くてというのだ。
「残念になってるわ」
「そうなの」
「そう、だからね」
それでというのだ。
「百点がね」
「落ちてるのね」
「少しね。やっぱり沙織はね」
「最後の最後でなのね」
「ええ、けれどね」
「けえど?」
「そこがかえっていいのかも知れないね」
最後の最後でミスがある、つまり詰めが甘くてというのだ。
「完璧じゃなくて」
「そうなの」
「完璧だったらもう面白くないし魅力もね」
そうしたものがというのだ。
「感じられないから」
「だからなの」
「実際あんたクラスでも嫌われてないでしょ」
「有り難いことにね」
「そう、完璧の方が評判はいいけれど」
「絶対に成功して終えてくれるから」
「けれどそれじゃあかえって魅力がないのよ
そうなるというのだ。
「人間としてね、完璧でないから人間的でね」
「いいのね」
「人間は機械じゃないでしょ」
母は娘に微笑んで話した。
「そうでしょ」
「ええ、それはね」
「だからよ、その方が人間としてね」
「魅力あるの」
「愛嬌ね。あんたは完璧でないから」
だからだというのだ。
「愛嬌があるのよ」
「そうなのね」
「そう、だから」
それでというのだ。
「かえってこうしたミスがある方がね」
「いいのね」
「そう思ったわ、というかね」
母はフォークとナイフを使ってハンバーグを食べつつ話した。
「あんたのハンバーグ充分美味しいわ」
「失敗していてもなの」
「充分にね」
そうだとだ、娘に笑顔で述べた。
「これはお父さんも喜んでくれるわよ」
「それは何よりよ」
「百点じゃくても」
完璧でなくてもというのだ。
「いいのよ、じゃあね」
「これからもっていうのね」
「ええ、人間として頑張っていってね」
母はこ
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