第一章
[2]次話
空に浮かぶ城
エカチェリーナ=イヴァノヴァ=トルストヤには夢があった。その夢を彼女はよく祖国ロシアにいる時に話していた。
「お空に浮かぶ岩の上にお城を築いてそこに暮らしたいですわ」
「それは確か」
芸術に詳しい従姉がエカチェリーナのその話を聞いて述べた。
「ルネ=マグリットの」
「ピレネーの城ですわ」
「そうよね」
「日本のアニメでもありますが」
「ガリバーにあったわね」
「はい、ラピュタもいいですが」
それでもというのだ。
「わたくしが思うのは」
「ピレネーの城ね」
「あのお城に住みたいですわ」
こう言うのだった。
「それが適えば」
「それね」
従姉はエカチェリーナのクールは美貌銀髪をロングにした白い顔の整った顔を観つつ彼女に話した。
「正直ね」
「不可能ですわね」
「この世界だとね」
「まず空に浮かぶ岩自体がないですわね」
「ルネ=マグリットはね」
従姉はその絵を描いたその画家の話もした。
「シュール=リアリズムで」
「現実にないものを描きますわね」
「ダリと同じでね」
ただし画風はダリとは全く違う。
「そうした人だから」
「それで、ですわね」
「お空に浮かぶ岩自体が」
「この世にはないですわ」
「その岩さえあれば」
「後は、ですわね」
「今は飛行機とかヘリがあるから」
空を飛ぶものがというのだ。
「岩まで煉瓦とかを運んでね」
「建ててそのうえで」
「住めるけれど」
「それでもですわね」
「結局ね」
「そうした岩がないので」
「無理よ」
城があるその岩自体がないのでというのだ。
「あくまであれはね」
「絵の中のことですわね」
「言うならファンタジーよ」
その世界のものだというのだ。
「本当にね」
「そうですわね」
「けれどあんたの言う通りね」
従姉はエカチェリーナにこうも言った。
「ああしたお城があれば」
「それならばですわね」
「一度は住みたいわね」
「そうですわね」
「現実にはないものだからこそ」
こう言うのだった。
「余計に」
「住みたくなりますわね」
「どうしてもね」
エカチェリーナの言葉に同意した、そしてエカチェリーナ自身もその思いを日増しに強くして言った。それは日本に来ても同じで。
よくマグリットの画集を観てそれで言っていた。
「このお城に住めたら」
「またマグリットなのです?」
そのエカチェリーナにターリャ=ウリツカヤが応えた。
「絵を観ているのです」
「ええ。できれば」
「そのお城に住みたいのです」
「お空に浮かぶ巨大な岩石の上のお城に」
「まさに夢なのです」
ターリャは友にこう述べた。
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