第三章
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「この岩魚も食うか」
「ああ、焼いて食おうな」
「村に帰ってそうしよう」
「すぐにな」
こう話してだった、他の魚や貝そして蟹達も獲ってだった。
村人達は村に帰り食いはじめた、その岩魚もだった。
腹を割いて内臓を取ってから焼こうとすると。その内臓の中に。
「団子?」
「これはうちの村の団子じゃないか」
「何で岩魚の腹の中にうちの村の団子があるんだ」
「どうしてなんだ」
「これは」
ここである者が気付いて言った。
「昨日の坊さんじゃないのか?」
「この岩魚がか」
「昨日の坊さんか」
「そうだったのか」
「ああ、昨日の坊さんが毒を流すなと言ったのはな」
それはというと。
「自分も川の生きものも皆死ぬからだ」
「それが嫌でか」
「坊さんの姿になって村に来てか」
「毒を流さない様に頼んだのか」
「そうだろうな、こんなことがあるんだな」
その団子を見て言った。
「世の中には」
「不思議なことだな」
「全くだな」
「岩魚が人になって言ってくるなんてな」
「こんなことがあるんだな」
村人達はしみじみと思った、それでその岩魚も他の死んだ川の生きもの達も今は食わず供養した。そうして以後この村では毒を使う漁をすることはなくなった。
その話を終えてだ、姉小路は羽柴にこう言った。
「こうした話がここにはあるんだ」
「へえ、岩魚がですか」
羽柴は目を瞬かせて応えた。
「お坊さんになってですか」
「この辺りにそんな話があるんだ」
「そうなんですね」
「それでわしはその村の生まれだ」
姉小路は笑って羽柴にこうも言った。
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