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汚職はしても
第一章
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               汚職はしても
 山縣有朋は評判の悪い人物である、それも非常にだ。
 傲岸不遜でかつ陰謀家として知られ権勢を誇っていた、そして何かと政治を壟断していると言われていた。
 しかも汚職の話が尽きず。
「一体どれだけ汚職しているんだ」
「一々数えきれないぞ」
「維新の時もあったしな」
「そして幕末でもやっていたらしいな」
「奇兵隊の金ピンハネしていたらしいぞ」
「兎に角汚職が多いな」
「金に無頓着だった伊藤さんとえらい違いだ」
 ただし伊藤は女好きを言われていた。
「傲慢で権力に執着して陰謀家でな」
「政党政治は嫌いだしな」
「本当に嫌な人だな」
「人気がないのも当然だ」
「全くだ」
 国民の多くがこう言って山縣を嫌っていた、それで。
 ある新聞の若い記者早見善太郎面長で長身で痩せた身体で涼し気な顔立ちで黒髪を奇麗にまとめた彼がこんなことを言った。
「山縣公爵といえば汚職だな」
「ああ、もうどれだけあるんだ」
「その話だけでも凄いぞ」
「その話は山みたいにあるぞ」
「汚職の塊みたいな人だ」
「井上さんも色々言われているがな」
 山縣と同じく長州出身の元老の彼もというのだ。
「あの人は三井の番頭だしな」
「色々言われているな」
「けれど山縣さんはな」
「比較にならないぞ」
「幕末から今までそんな話が尽きないからな」
「ある意味凄い人だぞ」
「その割にはお屋敷が質素らしいな」
 早見はこのことを言った。
「庭は奇麗でも。服も食事もな」
「そういえばそんなに贅沢じゃないな」
「暮らしはな」
「そうだな」
「何に使ってるんだ」
 汚職で貯めた金をとだ、速水は言った。
「一体」
「そういえばそうだな」
「何に使ってるんだ」
「あれだけ汚職して金貯めこんでるのにな」
「それは間違いなくてもな」
「暮らしは確かに質素だな」
 このことは記者達も事実だと述べた。
「毎朝六時には起きてるそうだな」
「それで乾布摩擦をしてな」
「いつも槍の稽古をしてたな」
「元々槍術免許皆伝でな」
「今もらしいしな」
「贅沢とは無縁だな」
「そうだろ、だからな」
 早見はここでまた言った。
「不思議なんだよ」
「汚職の金を何に使っているか」
「そのことが問題だな」
「普通貯め込んだ金は贅沢に使うしな」
「お妾さんはいても伊藤さんみたいじゃないしな」
「というかあの人そっちは殆どないぞ」
 妾はいても浮いた話がないというのだ。
「やたら汚職で有名だけれどな」
「言われてみたら贅沢って感じしないな」
「むしろかなり質素だな」
「豪遊の話もなくてな」
「色気も味気もない暮らしだな」
「そこが気になるな、一度調べてみるか」
 早見はあらためて述べ
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