第三章
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「ですから」
「そうなのだな」
「申し訳ありません」
「謝まることではない、過ぎるとは思う」
それでもというのだ。
「お前は婚約している、問題はない」
「左様ですか」
「それでもな。むしろ驚いているのだ」
「どうして驚かれているのですか」
「これまでお前は父上の言われることも母上の言われることも聞いてだ」
そしてというのだ。
「私の言うことも聞いて妻についてもだ。家の使用人達にも穏やかで優しく自分を律することが出来ていた。だが」
「ハンス様のことは」
「そこまで一途で動くとはな」
このことがというのだ。
「思わなかった、だからだ」
「意外なのですか」
「そうだ、想いは別か」
「私もこうしたことはです」
「なかったか」
「はじめてです、あの方のことを考えると」
そうすればというのだ。
「それだけで胸が辛くなります、ですが」
「それでもか」
「想わずにいられないのです」
「それがハンス君か」
「左様です」
「彼がそこまで好きなのだな」
「恋愛を扱った小説等は目にしてきましたが」
「自分がそうなるとはか」
「思いませんでした、ですが」
「そうか、だがそこまで想っているのならな」
妹の彼女がハンスと会ったその部屋の中で告げた。
「一生だ」
「一生ですか」
「そうだ、死ぬまでだ」
まさにその時までというのだ。
「その想いを続けるのだ」
「そうすればいいですか」
「そこまで想うならな」
「では」
「うむ。しかしまさかな」
兄は妹にこうも言った。
「婚約者が何もかも好みでだ」
「今の様になるとは」
「思わなかった」
そうだったとだ、高太郎は述べた。
「夢にもな」
「そうでしたか」
「こうしたこともあるか、お前がそこまで恋に動くとはな」
「私もこうなるとは」
「思わなかったか」
「はい」
「父上も母上も私もお前を厳格に育ててきた」
この自覚はあった。
「今ではいなくなったという大和撫子になってもらう為にな」
「学業もスポーツも習いごとも」
「そして家事もな」
その全てをというのだ。
「そうしたが」
「それでもですか」
「恋愛のことは別か。だが一人の相手を思うことはいい」
このこと自体はというのだ。
「なら結婚するまでハンス君のことを想い」
「結婚してからもですか」
「想え、いいな」
「わかりました」
友希は兄の言葉に頷いた、そうして。
大学時代も就職してからもハンスと楽しい時間を過ごし遂に結ばれた。それからも彼女は彼と幸せに過ごした。普段の彼女は大和撫子だった。だが夫のことになるとただひたすら一途で恋に生きる女だった。そうして夫と共に幸せな一生を過ごした。
英才教育をしても 完
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