捕食者たち
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のウィザードとなり、冷気を放つ。それにより、狒々の動きが鈍化していく。
「友奈ちゃん!」
彼女は、大きく見開いた目でウィザードを見上げた。一瞬躊躇いながら、ウィザードは言った。
「コイツと何があったかは知らないけど、このまま野放しにはできない」
「でも……その人は、お爺ちゃん想いのいい人だったんです!」
その言葉に、ウィザードは狒々の怪物を改めて凝視する。怪物の頭ではあるが、その青いジャージは今時の若者のものだった。
「その人、人間だったんですよ!」
友奈の悲痛な叫びが響く。
だが、ウィザードは静かに告げた。
「人間だった奴が怪物になるなんて、よくある話だよ。……もう、助けられないのも」
『ウォーター スラッシュストライク』
水をまとった斬撃。それにより、凍りだした狒々を砕こうとした。
だが、ウィザードの刃より先に、黒い鼻が狒々を捕まえた。
「……!」
それは、医者の姿をした象の怪物。彼は足元に狒々の怪物を放った。
「人間だった……か」
象の怪物は、狒々の頭を足で受け止めながら呟く。凍り付いている狒々の体にひびが走った。
「……お前も……?」
しかし、象の怪物はウィザードとの対話に応じず、狒々の怪物に覆いかぶさる。
象が何をしているのか、それを理解したとき、すでに狒々の怪物はほとんど消えていた。
「……食ってる……」
呟いた龍騎の声で、それが現実だと思い知らされる。
グチャグチャ。肉を斬る音が、鼓膜を通じて脳に伝わる。
「人間である必要などあるのか?」
青ジャージだけになった狒々を完食した象は、その口を手で拭う。
「この味わい……この美食は、この体にならないと分からなかった……!」
象の怪物は感慨深げに言った。
すると、その体に異変が生じる。体内が暴走しているのだろう。肩や背中から骨が飛び出し、その体表を突き破る。
四つん這いになった象の怪物は、やがて人の形を忘れた。メキメキと体が巨大化していき、腕の筋肉量の比重も人間のそれとは異なっていく。
やがて象の怪物は、象の化け物へとなる。アフリカゾウの倍近い体格を持つ化け物。その耳はダンボを連想させ、その巨体は神話の時代の怪物を思い起こさせる。
象そのものの姿。漆黒のボディで、象は吠える。ただ異なる部位は、その特徴たる鼻。本来の象には一本しかないそれは、無数の花のように数が増えていた。
「それって……もう、人間でいる気はないってことじゃないか」
龍騎の言葉への返事は、象の鼻の捕食行為。無数の鼻たちが獲物を求め、手あたり次第に瓦礫や落とし物を掴み取り、象の口元へ運び、捕食させる。
「! 危ない!」
倒れているマスコミが
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