第7話『鉄脈術』
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ぎたみたいですね。 立奈さんは大丈夫ですか?」
「多分、一応……」
「では立石君、天野さん。 私は長谷川さんを見ているので立奈さんと燕ちゃんをお願いします」
「了解。 お願いされました」
立石先輩の手を借りて立ち上がる。 深呼吸をして人心地がつくと、今度は何が起こったのかという疑問が湧いてきた。
私たちのいた場所は先生たちから離れていたし、とてもじゃないけどあの状況から助けられるとは思えない。
「あの、一体何が……?」
「《鉄脈術》ですよ。 立奈さん、見るのは初めてですか?」
ほら、と指差された方に視線を向ける。
そこではさっきまで私たちが怪物に襲われた場所で柳葉先生が戦っていた。 その光景を見てようやく気付く。 私たちの立っていた場所と柳葉先生の立っていた場所が入れ替わっているんだ。
「無茶苦茶ですよね。 先生は瞬間移動してますし、三年の先輩にはちょっとした流星群を降らせる人もいるんですよ」
そんなことを言っている間にも、柳葉先生は死角から死角へと、まるで踊っているかのように跳びまわる。 あまりにも現実離れした光景に言葉が出てこない。
そんな私を見て立石先輩は、まるで異常事態なんて起こっていないかのような普段通りの微笑みを浮かべる。
「けど、それが製鉄師になるってことなんですよね」
「えっ?」
「もし、立奈さんが製鉄師を目指すなら今から見ることは全部覚えててくださいね。 “歪み”を生まれ持ってしまったために世界の枠から外れるということの意味を」
私に向かって言っているのだろうか。 まるで独り言のように気楽な口調で立石先輩は言葉を紡ぐ。
その意味が分からずただ呆然としている私を置いて、立石先輩は飛鳥さんの手を引き柳葉先生の方へと歩き出す。
「ほら、飛鳥行くよ。 そろそろ先生だけじゃ厳しそうだし」
「う、うん。 あれはお化けじゃない、あれはお化けじゃない……燃えるよ、勇気!」
「製錬開始、僕が振るい、僕が守る」
「製錬許可、私が作り、私が壊す」
製鉄師によって、唄が紡がれる。
唄は光となり飛鳥さんへと潜り込み、その身に宿す歪みを影として現世に映し出す。
その影とは、豪華な装丁の一冊の本。
「繋ぎ紡ぐ絆……鍛鉄《Smart LINKs》」
ひとりでに頁が捲られる本はやがて一枚の絵を描き出す。 そこに描かれていたのは、神話に語られる伝説の剣。
本から取り出した剣を構え、立石先輩は勇烈に踊りかかる。
「助太刀……ってやつですね。 使いますか?」
「む、素手だと厳しいと思っていたところだ。 ありがたく借りるとしよう
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