四十二 火影の子
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木ノ葉病院。その奥の奥の病室。
秘密裡に収容された、アスマの父――三代目火影・猿飛ヒルゼン。
“木ノ葉崩し”以降、昏々と眠り続けるヒルゼンは世間では殉職したように見せかけている。
寝たきりの火影を毎日のように見舞っているアスマは、一向に目覚めぬ父親の顔を眺めた。
「今は…猿飛一族に生まれたことも悪くねぇって思えるぜ」
点滴の音が響く病室内では、アスマの小さな呟きを拾う者は誰もいない。
「だからさっさと起きろよ、親父。木ノ葉丸も…今から生まれてくるもう一人の孫も、アンタを待ってるぜ」
孫である木ノ葉丸を大層大事にしてくれたヒルゼンだ。
これから紅のお腹から産まれてくる我が子も、きっと可愛がってくれるだろう。
最後に父親の顔を一瞥すると、アスマは病室を後にした。
静寂が訪れた病室のカーテンの波がゆっくりと引いてゆく。
寸前まで誰もいなかった窓辺。
薄い白を透かす陰影は先ほどまで外界の木々だけを確かに映していたはずだ。
しかしながら、今は小さな影がヒルゼンの病室の窓を背にして、佇んでいた。
室内で聞く者はいなかったが、室外でアスマの呟きをきっちりと拾っていた彼は、空を仰ぐ。
「父親、か…」
秘密裡に収容されている病室であるにもかかわらず、その窓辺にてアスマの話を秘かに耳にしていた彼はその蒼い双眸を細めた。
視線の先には、背後で寝入る三代目火影の顔が彫られた岩。
並ぶ火影岩の四つ目の顔を睨む。
その眼は厳しいものだった。
「────再不斬」
「おう」
隣に佇んでいた再不斬が二つ返事で印を結ぶ。
やがて立ち込めてきた霧を認めると、ナルトは口許に弧を描いた。
「細工は流々」
肩越しに振り返る。
背後の病室に寝入る三代目火影をカーテンを透かして眺めると、ナルトは囁くようにして微笑んだ。
「仕上げを御覧じろ、ってね」
刹那、霧がぶわり、と木ノ葉の里を始めとした火の国全体に広がり始める。
霧の向こうへ掻き消える大きな影と小さな影を、気に留める者は誰もいなかった。
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