四十二 火影の子
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で、テウチの娘であるアヤメが「あら!」と目を輝かせた。
「おめでとうございます!」
「え、あ〜…なんか照れるな…ありがとよ」
頭をポリポリ掻いて照れ臭そうに笑ったアスマは、愕然とするカカシに苦笑する。
そうして身体の向きを反転させると、先ほどの表情とは一転して真剣な顔つきでカカシに向き合った。
「そういうわけでだな…カカシ。俺になにかあったら紅と…子どもを頼む」
頭を下げてくるアスマを見下ろす。
紅の腹の中にいる子どもを頼んでくる同僚の旋毛を見ながら、カカシは顔を顰めた。
「…縁起でもないこと、言わないでよ」
カカシの返事に、ふ、と笑ったアスマは顔を上げる。
いつものにこやかな笑みを浮かべて、「そうだな」と彼は新しい煙草に火をつけた。
「お前のほうが先におっ死んじまうかもしんねーしな」
「煙草スパスパ吸ってるアスマには言われたくないよ」
店内に籠るラーメンの湯気が煙草の紫煙と雑じり合う。
店主の視線が流石にそろそろ痛かったので、アスマは煙草を消すと立ち上がった。
「じゃあな、カカシ。“風”の性質変化のコツならいつでも教えてやるよ、とナルに言っておいてくれ」
「あいよ」
ラーメンのお代を払って、暖簾を潜る。
手をひらひら揺らしながら歩くアスマの向かう先を察して、カカシは眼を細めた。
白一色で占められた空間。装飾の少ない、どこか殺風景な病室で、アスマは深く息を吸う。
煙草を吸いたいのをぐっと耐え、窓から視線をベッドに戻した。
薄く開かれた窓に掛かる白いカーテン。
陽射しを遮るそれは、寄せては返す波のようにふわりと大きく揺れている。
ベッドに横たわる人物の深く刻まれた皺こそが、木ノ葉の里に尽力を尽くしてきた彼の経験の積み重ねだと誰よりも理解しているアスマは、瞼を閉ざして微笑んだ。
「────今なら、少しはわかる気がするよ……親父」
かつて大名の護衛の任務を任された際、アスマは三代目火影…父である猿飛ヒルゼンに対して、反抗心を抱いていた。
大名を守ったことが玉を守ると同義。大名こそ守れたものの、死傷者を生んでしまった任務を憂い、ヒルゼンが強く諭してきた言葉が今でもアスマの耳に響く。
『玉を守る為の戦いがどれほど難しく大切なのかという事を、今のお前には到底判るまい』
忍びの任務に犠牲はつきものだ、という思考故、父が自分を認めたくないだけなのだろうと、ヒルゼンへ反発していたあの頃の自分を思い出して、アスマは苦笑いをする。
自分が父親になって初めて理解できたヒルゼンの考えに敬意を示して、ベッドの上の父を見下ろす
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