お爺ちゃん想いの青年
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_!?」
「え、えいっ!」
驚く怪物を、友奈は蹴り飛ばす。びちゃびちゃと水たまりを転がった怪物は、そのまま廊下を……彼の祖父がいた病室の方角へ走り去る。
「待って!」
友奈は落としたスマホを拾い上げ、アプリを起動しながらそのあとを追いかけた。
遅かった。
勇者の友奈は、その光景を見てそう判断した。
廊下ですら、人々が斬られたような重傷を負っており、いやな予感が募っていたが、それが頂点に達していた。
白いのが特徴の病室。それは、着色料の爆発があったかのように、赤い華が咲いていた。立ち込める鉄の臭いに、友奈は口を抑える。耳を塞ぎたくなる、グチャグチャという咀嚼音。ベットに横たわる獲物を、一心不乱に捕食している音だった。
「……ねえ」
友奈は、病室に踏み入る。すると、青いジャージを真っ赤に染めた怪物が振り向いた。
「さっきのお兄さん……なんだよね?」
それは肯定か否定か。彼は、友奈へ雄たけびを上げるだけだった。
この病室のベットは、一つだけではない。左右に二つずつ並び、合計四つのベットがある。それら全て、白は赤に塗りつぶされており、そこにいるはずの患者は、腕、足、上半身のみと、無惨な姿となっていた。
「嘘だと言ってよ……」
その言葉を否定するように、怪物は二足て立つ。あの青年そのままの服で、友奈は否が応でもさっきの青年だと思い知らされる。
そして怪物は、友奈へ飛び掛かる。受け身が遅れた友奈は、そのまま怪物の勢いにより病室、廊下を突き抜ける。廊下のガラスをぶち破り、病院の吹き抜けへと出た。
「!」
怪物を抑えながら、友奈は地上を見下ろす。怪物を追いかけて、いつの間にか上の階へ上っていたので、地上は遥か下だった。そこには、赤が目立つ院長の髪と、水色が特徴の最後尾の真司。無数の記者団。その周囲の人々。
「みんな逃げて!」
友奈が叫ぶ。見上げた人々は、あるものは逃げ、あるものは写真を撮り、あるものは茫然としていた。
そして友奈は、院長の背後。……誰もいないものの、人だかりのすぐ近くに背中から落下する。
「がはっ……」
勇者服でも相殺しきれないダメージが全身を貫く。カシャカシャとシャッター音が聞こえるが、それにより、怪物の体重が自分から退いた。
つまり。
「! 逃げて!」
友奈の声もまた間に合わない。
すでに狒々の怪物は大ジャンプし、手ごろな記者へ飛び掛かり、牙を突き立てる。
「ぎゃああああああああああああああああ!」
断末魔の悲鳴。友奈は怪物の肩を掴み、反撃の決意をした。殴り飛ばし、誰もいない奥の方角へ殴り飛ばす。
「大丈夫……です……か」
記者を助けた友奈は言葉を
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