お爺ちゃん想いの青年
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な癖でもあるのだろう。青年は三杯目の水を飲む。
「ップハッ!」
不満がたまっている彼は、一気に息を吐きだす。
「……爺ちゃん」
青年はそのまま、友奈に背を向けて廊下を見つめる。おそらくその方向に、彼の祖父の病室があるのだろう。
青年はそのまま、友奈に尋ねる。
「なあ。……オレは戻るから、院長に爺ちゃんのこと、早く何とかしてって伝えてくれねえか?」
「え?」
「やっぱ、傍にいてえんだよ。初めて会ったやつに頼むのも変な話だけどよ」
「それだけ? 私にできることなら、何でもするよ?」
友奈は躊躇いなく言った。
「……何でも?」
「うん! できること、何でもする! それが私、勇者部だから!」
「……サンキュー。だったら……」
彼は振り向く。にっこりと笑顔で対応しようとした友奈は、彼を見て凍り付いた。
「なあ、一緒に爺ちゃんの病室に来てくれよ。爺ちゃん、女の子大好きだからさ。手でも握ってくれればきっと喜ぶぜ」
彼の言葉が、もう聞こえない。友奈の耳が、口が、脳が、理解を拒んでいた。
彼が背を向けた、ほんの十秒。彼の首元に、黒い血管が浮き彫りになっていた。
「……あの、……お兄さん……」
「お? オレの名前?」
自身の異常に気付かない青年。彼はそのまま、ニッコリと笑顔を見せた。
「オレは……
名前が聞こえない。彼の言葉を遮るように、その体から大きな蒸気が立ち上ったのだ。その熱さに、思わず友奈は後ずさる。
何がどうなっているのか。友奈にも、青年当人にもきっとわかっていない。
そして。
「_______!」
青年が消えていた。友奈の前にいたのは、狒々の顔をした怪物。
「!」
友奈は驚いた。怪物の出現以上に、怪物の着ている服が、青年のそれそのものだったことに。
あの青年が、目の前の怪物になったということに。
「これって……!」
狒々の怪物は、そのまま友奈に襲い掛かる。
友奈はウォーターサーバーを倒し、自身の盾とする。怪物の爪で引き裂かれた容器から、残りの水が地面に広がる。
人間ではない、狒々そのものの鳴き声。怪物は再び友奈へ飛び掛かり、押し倒す。
「変身するしか……」
牙を体に突き立てようとする怪物を抑えながら、友奈は変身アイテムであるスマホを探そうとする。だが、その白いスマホは、座席の下に無造作に放置されていた。
「そんな……!」
すでに手の届かない距離。
人智を超えた力の怪物を抑えることができず、友奈の手は怪物の拘束をやめた。肉を切る牙が迫る。しかし、その牙は届かない。友奈の背後に出現した妖精、牛鬼がバリアを張り、怪物の攻撃を防いでいた。
「_____
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