第百八十話 プールサイドの対面その三
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「実際に」
「そうなのです?」
「それで胸も同じかしら」
男の髪の毛と、というのだ。
「女の人にとっては」
「まそうかも知れないのです」
「その辺りのことが今わかってきたわ」
「身体のことは気にすることはないのでは」
タゴールは冷静に述べた。
「別に」
「そこでそれを言うか」
「はい、それよりもです」
タゴールはリーに対して述べた。
「大事なことは内面です」
「正論やな」
「そう言ってくれますか」
「ああ、けれど世の中コンプレックスもあってや」
「正論だけではですか」
「動かん、胸も髪の毛も背もな」
そういった身体のことがというのだ。
「それぞれや」
「コンプレックスがあり」
「気にしてるんや」
「そうですか」
「カエサルにしても」
ローマのこの英雄もというのだ。
「そうやったな」
「そうでしたね、彼はまさにその髪の毛のことで」
「いつも気にしていた」
「禿の女ったらしと言われて」
そしてというのだ。
「顔を曇らせていました」
「そうやな」
「凱旋の時に兵士達にも言われて」
自分が率いていた兵士達にだ。
「むっとしていたとか」
「そこで怒らんかったのは立派やったけどな」
「カエサルの器の大きさが出ていますね」
「そやった、けれど気にしてたのは事実やった」
「そうでしたね」
「とにかく身体のことはな」
このことはというのだ。
「あれこれとな」
「気になることですね」
「それぞれな」
「それで胸もですか」
「髪の毛も。私も将来は心配している」
「髪の毛のことで」
「きたら」
薄くなればというのだ。
「そう思うと。親戚にそうした人がおって」
「薄い人がですか」
「三十五歳で髪の毛が逝った」
そうなったというのだ。
「あっという間やった」
「ここはご愁傷様と言うべきでしょうか」
「自分で髪の毛の冥福を祈ると言ってたわ」
「それはまた」
「そうした人もおるから」
「将来のことは」
「かなり不安や」
こうタゴールに話した、そして。
彼の頭、今はターバンを巻かず黒いショートヘアのそれを見た。褐色の肌に彫のある顔と黒い目が映えている。背は一七八程ですらりとしている。
「自分も髪の毛は」
「気にしていません」
「そうなんか」
「いつもターバンを巻きますね」
「ああ、そやからか」
「基本です」
髪の毛のことはというのだ。
「気にしていません」
「そやねんな」
「はい、将来薄くなっても」
「それでか」
「別にいいのでは」
髪の毛が薄くなってもというのだ。
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