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戦国異伝供書
第百十四話 人取橋の戦いその九

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「そうする、今することはな」
「よくないですな」
「確かに今敵は退いておるが」 
 夜の闇に紛れてだ。
「それを多くの兵がわかっておるか」
「見えておりませぬ」
 片倉が言ってきた。
「それは」
「そうであるな、だからな」
「それで、ですか」
「そうじゃ」
 まさにというのだ。
「だから夜の間はな」
「勝鬨はあげませぬか」
「誰もが勝ったとわかる」
「そうした状況でないと」
「それは出来ぬ、それでじゃ」
「今宵はここで休みますか」
「そうする、そして城に戻るぞ」
 片倉にも話した。
「よいな」
「わかり申した」
「そして死んだ者、傷付いた者はな」 
 この度の戦においてだ。
「皆連れて帰るぞ」
「そうしますか」
「そして観音堂山城で首実検をしてな」
「そうしてですな」
「そしてじゃ」
 それでというのだ。
「我等はな」
「米沢に戻りますか」
「そうする、よいな」
「して兄上」
 今度は小次郎が言ってきた。
「祝いの宴もですな」
「勝ったそれじゃな」
「やはり観音堂山城で」
「あそこでじゃ」
 まさにというのだ。
「行うぞ」
「わかり申した」
「皆その時はな」
「兵達もですな」
「そうじゃ、皆じゃ」 
「心ゆくまで飲むのですな」
「そうせよ、城に戻ればな」
「それでは」
 小次郎も頷いた、そして茂庭も言ってきた。
「殿、何と言っていいか」
「ははは、爺にはまだ死んでもらっては困るからな」
「助けて下さいましたか」
「先陣の兵達もな、皆な」 
 まさにというのだ。
「失うつもりはなかった」
「だからですか」
「戦では人は死ぬ、しかし無駄に死なせることはない」
「確かに」
「だからじゃ」
 それでというのだ。
「わしもじゃ」
「それがしと先陣の者達もですか」
「助けた、それにあそこで爺が倒されるとな」
「敵はその勢いを駆ってさらに攻めて来る」
「そうなると思ってじゃ」
「あそこで、ですか」
「あの様に攻めてな」
 敵を伊達家の先陣が囲んだ時その後ろを全力で攻めてというのだ。
「崩したのじゃ、あそこで崩してな」
「戦もですな」
「勝つことが出来た、だからな」
「よかったですか」
「まことにな、そしてな」
 政宗は笑ってさらに話した。
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