第二章
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「忘れたらね」
「大変なことになるわね」
「狂犬病になったら」
「ワンちゃんがね」
「狂犬病の致死率は百よ」
「確実なのよね」
「噛まれたら終わりよ」
そして感染したらというのだ。
「ワンちゃんにとってもね」
「確実に死ぬから」
「もうこっちもね」
「何があっても予防接種しないとね」
「若しどちらか一方でも出来ないなら」
それならというのだ。
「ワンちゃん飼ったら駄目よ」
「本当にそうね」
「ええ、だからその子もね」
真紀子はコテツを見ながらさらに話した。
「どっちの予防接種もね」
「絶対に行くわ」
「そうしてね」
「ええ、そうするわ。ただね」
和美は真紀子の言葉に頷いてから彼女に問い返した。
「真紀子ワンちゃんのことに詳しいわね」
「だってうちも飼ってるから」
真紀子は和美にあっさりと答えた。
「だからね」
「詳しいの」
「そうよ」
こう和美に答えるのだった。
「予防接種のこともね」
「知ってるのね」
「蚊のこともね、蚊も狂犬病もね」
「どちらもね」
「何があっても舐めたら駄目よ」
それこそというのだ。
「舐めたらね」
「その時は泣くわね」
「そのことは肝に銘じておくことよ、だから」
「どっちの予防接種も」
「しっかりとね」
真紀子は和美にかなり強い声で言った、そして実際にだった。
和美はコテツをどちらの予防接種にも連れて行った、そのうえで彼を少なくともこの二つの危機からは守った。
そしてその中で。
和美は一人の魅力的な男性と知り合った、黒髪をショートにしたきりっとした顔立ちの青年だった、背は一八〇位で逞しい身体つきだ。
その彼がだ、コテツによく似た白いマルチーズを抱いて予防接種から帰るところでコテツを抱いている和美に声をかけてきたのだ。
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