第98話『予選C』
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分かれ道から1つのルートを選び、森の中を駆ける晴登。ただいまの順位はほぼ最下位なので、この先のギミックを如何に素早く突破するかが今の課題と言えよう。
そう思いながら走っていると、徐々に薄暗い森に光が差し込み始め、出口と思われる場所が見えた。
もしかすると、この先にギミックがあるのかも。自然と足に力が入る。
──しかし、その先に見た光景は、
「嘘だろ……」
森を抜けると、そこは少し開けた場所だった。ただし眼前、行く手を阻むのは巨大な岩の断崖。周りも全て囲まれている。
ここに来て、最悪のギミックだった。
「10m以上あるよな……」
崖の上を見上げながら、晴登は嘆息。周りを見渡すと、同じように狼狽える人々の姿が映る。どうやら、この道は"ハズレ"だったらしい。
「今から引き返すか……? でもそれだとタイムロスが……」
ルール上、引き返してはいけないということはないはず。ただ時間の無駄になるだけで。
しかし、その無駄が今回は運命の分かれ道となる。この崖を越えるが早いか、戻って別のルートを進むが早いか……その答えは誰にもわからない。
「でもこの高さはさすがに……」
いくら体育でロッククライミングを経験したとはいえ、人口の壁と自然の壁では勝手が違う。見る限り、登りやすそうな設計になっている訳でもなさそうだし。
「へっ、これくらい楽勝!」
「あっ!」
晴登が悩んでいると、前にいた男が壁面を登り始めた。やけにすいすい登る様子を見るに、恐らく魔術を使っているのだろう。
するとその男を筆頭に、次々と参加者たちが崖を登り始めてしまった。
「このままじゃ置いてかれる……!」
焦燥感を覚える晴登だが、かといってヤケになって登り切れる高さでもない。
せめて、飛ぶことさえできれば──
「待てよ、そういえば俺この前……」
その時、晴登の頭の中にある記憶が蘇る。
それは魔導祭のミーティングを行なった日、飛ぶことを練習していた時だ。結局あの時は飛べずじまいだったが、
「"跳ぶ"ことはできたよな……」
『自由に空を飛ぶ』という望みには程遠いが、それでも高く跳ぶ"だけ"ならできない話ではない。
目の前の崖は校舎よりも高そうだが、確かあの時はそれ以上に跳べたはず。
「ぶっつけ本番だけど、やるしかない……!」
晴登は少しだけ崖に近づき、上を見上げる。障害物は無し、まっすぐ上に跳んでも問題はなさそうだ。
「ふぅ……」
やると決めたら、即やらなければ時間はない。できない可能性は考えるな。
晴登は目を閉じて集中力を高め、足の裏に風を収束させる。そして空気を圧縮して──
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